333部分:第二十二話 その日の訪れその四
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第二十二話 その日の訪れその四
その憂いのままだ。王は周囲に話していく。
「私も遂にだな」
「はい、用意は進んでいますので」
「御期待下さい」
「我々が進めていますので」
「済まないな。だが、だ」
それでもだと話すのだった。王はその憂いを増していく。
その話をしながらだった。王は出されたワインを飲みワーグナーの音楽を聴いていく。その中でだった。王は静かに話を続けていく。
「私が結ばれる相手は」
「それがゾフィー様です」
「あの方になります」
「そうなりますので」
「何故か」
何故かとだ。王は言葉を続ける。
ワインを飲むがその味を楽しまずだ。憂いの中にその心を沈ませながらだ。
王は述べた。こうだ。
「私が結ばれるのは彼女ではなくだ」
「ゾフィー様ではない?」
「あの、それでは一体」
「どなたというのでしょうか」
「エルザなのか」
王自身はそうだというのだった。
「ゾフィーは。エルザなのだろうか」
「それならばそうではないのでしょうか」
「ゾフィー様と結ばれますので」
「ですからゾフィー様はエルザ姫になります」
「そうなるかと」
「そうなるのだな」
答えはしたがだ。憂いは消えていない。
その憂いのままだ。王は話していく。
「では私は白銀の騎士か」
「ローエングリンですね」
「歌劇のあの騎士」
「白鳥の騎士ですね」
「そうだな。私は白鳥の騎士なのだな」
白銀の騎士であり白鳥の騎士である、それが王自身だと思った。しかしだった。
白ワインを飲みつつだ。王は酔いを感じなかった。そうしてだった。
「そうなればいいのだがな」
「ではそうなられますか」
「その騎士に」
「なるのだな」
その未来を話してだった。
王は今はワインを飲みワーグナーを聴いていくのだった。その婚礼の曲を。
婚礼の曲を聴きながらだった。王は婚礼のことを考えていた。しかしそれは楽しげなものではなくだ。憂いを漂わせたものであった。
その憂いのまま婚礼が進むのを見ていく。だがそれでもなのだった。
憂いを深めていくのだった。それは止まらなかった。
そしてなのだった。王はふとだ。ホルニヒに漏らすのだった。
夜になろうとしている深い黄昏の中でだ。王は言った。
「私はこのまま」
「ご婚礼のことですね」
「私は結ばれるのだな」
「そうです。ゾフィー様と」
「そなたもそう言うな」
王は彼の言葉を聞いてこう述べた。
「そうだな」
「はい、そうです」
「では私は」
「陛下は?」
「何になるのだろうか」
こう言うのだった。黄昏がさらに深くなっていく宮廷の中で。
「私は一体」
「陛下は陛下ですが」
「そうか。私は私か」
「はい、そうではないのでしょうか」
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