第五章
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「来年こそは優勝ってね」
「言い出すわよね」
「あの子毎年そうじゃない」
「優勝を逃してもね」
「来年はって言うから」
十月の終わりから十一月の彼の日常だ。
「だからね」
「あと少しで」
「そう、立ち直るわよ」
阪神はというのだ、こう話してだった。
千佳はカープの優勝そして日本シリーズ出場に乾杯した、彼女にとって今は天国だったが寿は今は地獄にいた。
だが両親そして千佳が予想していた通りだった、千佳が乾杯をした三日後の朝寿は朝食の場で家族に不敵な笑顔で話した。
「来年の阪神はやるよ」
「ああ、監督さんね」
千佳は朝食のお味噌汁を飲みつつ応えた。
「矢野さんよね」
「あの人になるからな」
だからだというのだ。
「二軍を勇将させてくれたんだ」
「一軍もっていうのね」
「悪いがカープの四連覇はないからな」
寿は今の時点で千佳に勝ち誇って告げた。
「残念だったな」
「はい、聞いたわ」
妹はその兄にクールに返した。
「じゃあ来年はっていうのね」
「甲子園がカープの墓場になるからな、ただな」
「ただ?何よ」
「そうなっても落ち込むなよ」
このことも今から言うのだった。
「むしろ阪神の強さに脱帽してくれ」
「阪神が優勝したらね」
千佳は兄に冷めた目のまま返した。
「そうしてあげるわ」
「来年の阪神は違うからな」
「それ去年も言ったし一昨年もだったし」
寿は実際に毎年そうである。
「その前もじゃない」
「それがどうした」
「いや、強いって思ってね」
「僕が強いか」
「普通にへこたれないから」
阪神に何があってもだ。
「それは凄いわ」
「へこたれていて阪神ファンがやれるか」
それも熱狂的なだ。
「最初からな」
「だからへこたれないの」
「そうだ、それは御前もだろ」
他ならぬ千佳もとだ、寿はおかずの卵焼きに醤油をかけたもので御飯を食べつつ妹に言った。おかずは他に梅干しや漬けものもある。
「カープに何があってもな」
「へこたれないっていうのね」
「それは凄いさ、けれどな」
「来年は、なのね」
「残念だったな」
満面の笑顔で言うのだった。
「阪神の胴上げを見せてやるよ」
「何言ってるの、来年もカープが優勝よ」
千佳は兄の言葉が止まったところで反撃に転じた。
「マツダスタジアムで胴上げ見せてあげるわ」
「言ったな、その言葉忘れるなよ」
「お兄ちゃんもね」
「ああ、わかったからな」
「早く食べなさい」
ここで両親が二人に言った。
「全く、朝から言い合って」
「二人共早く食べて学校に行きなさい」
「うん、じゃあね」
「そうするわね」
兄妹も両親の言葉に頷いた、そうして後は静かに食べた。
だが寿は登校の時も元気だ
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