第一章
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兄妹の天国と地獄
根室千佳は自分が熱狂的に応援している広島東洋カープの三連覇に笑顔になっていた、それでクライマックスの後でだ。
巨人に三連勝してシリーズ進出を決めたのを見て両親にお願いをした。
「苺ジュースでお祝いしていい?お菓子も出して」
「お菓子はないわよ」
キッチンで食器を洗っていた母親が言ってきた、父親はソファーに座って今は焼酎をロックで飲んでいる。
「苺ならあるわよ」
「苺に苺ね」
「それならあるわよ」
「そうね、どっちも赤だし」
カープの赤だからとだ、千佳も応えた。
「それじゃあね」
「いいでしょ」
「ええ、まあ苺ジュースはピンクだけれど」
正確に言うとそちらの色だというのだ。
「けれどそれでね」
「お祝いするのね」
「そうしていいわよね」
「あまり食べ過ぎない様にね」
母は娘にこのことを注意した。
「いいわね」
「ええ、去年はね」
千佳はジュースと苺のある冷蔵庫に向かいつつ母に言った。
「残念だったからね」
「優勝しただろ」
父は焼酎を飲みピーナッツを食べつつ娘に問うた、テレビは先程まで千佳がそのカープの試合をやっていたが今はCMが流れている。
「だったらな」
「いや、シリーズに出ないと」
つまりクライマックスに勝てないと、というのだ。
「駄目でしょ」
「だからか」
「去年は残念だったわ」
心から言う千佳だった。
「けれどね」
「今年は出られてか」
「よかったわ、それも相手は巨人」
千佳が心の底から嫌い憎んでいる相手だ、その嫌いぶりは巨人に負けただけで次の日全身に暗黒のオーラを纏う程だ。
「最高の勝ち方だったわね」
「だから余計にいいか」
「本当にね、最高の気分よ」
冷蔵庫を開けて苺ジュースと一度を出しつつ父に応える。
「それで今からね」
「乾杯か」
「そうするわ」
こう言ってだ、千佳は愛するカープのシリーズ進出を祝って苺ジュースと苺で乾杯し祝勝に楽しむことにした。
それで気持ちよく飲んで食べていたが。
自分の部屋で勉学に励んでいた兄の寿が来た、寿は千佳が飲み食いしているのを見てすぐに彼女に言った。
「おめでとうと言っておくな」
「有り難う」
「ああ、よかったな」
やや背中を丸め肩を落とした姿勢で言うのだった。
「本当にな」
「お兄ちゃんも飲む?」
千佳はジュースを飲みつつ兄に誘いをかけた。
「それで食べる?」
「それカープの祝勝だろ」
「中継観てたの?」
「何で僕がカープの試合観るんだよ」
これが兄の返事だった。
「阪神だろ、僕は」
「そうよね」
「御前がそこで嬉しそうに飲んで食べてるからわかったんだよ」
骨の髄までの鯉女である妹がというのだ。
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