329部分:第二十一話 これが恐れその十九
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第二十一話 これが恐れその十九
それはリラについても同じでだ。こう言うのだった。だがそれでもだった。
「ですがそうはなれない方なのでしょうか」
「幸福はですか」
「あの方にとっては」
「そうも思います」
こう周囲に話すのだ。
「若しかしてと思いますが」
「幸福にならないといけないがそれはなれない」
「それは悲劇ですね」
「まさにギリシア悲劇の様な」
「そうしたものですね」
こうした話をしてだった。周囲も話すのだった。
「それがあの陛下なのですか」
「バイエルン王だと」
「そう仰いますか」
「そうでなければいいのですが」
リラは王を心から心配してその言葉を出す。
「陛下は是非」
「そうですね。それ」
「あの方は幸福にならなくてはなりません」
「それは必ずですが」
「ですがあの方は」
「人は時として」
どうなのか。リラの話は続く。
「求めるものは得られないもの」
「そうしたものがありますね」
「確かにそれは」
「時としてですね」
「はい、あの方にとってはそれはです」
「幸せ」
まさにだ。それがだというのだ。
「幸せではないでしょうか」
「人としての幸せ」
「幸福がですか」
「そうです。鏡を見られるだけではなりませんから」
こうした話をしてだった。王の未来を心配するのだった。
王の婚約は婚礼に進もうとしている。しかしその婚礼がどうなるのかはだ。多くのものは幸せになるものと思っていた。しかしなのだった。
その幸福を。王は得られるのか、そして手に入れられるのか。そのことを読みわかっている者はだ。憂いを感じずにはいられないのだった。
第二十一話 完
2011・5・25
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