第一章
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罠にかかった鹿
インドネシアのジャワ島に伝わる話である。
この島にカバヤンという若者がいた、彼は猟師であり彼が仕掛ける罠には常に獲物がかかった。
しかも剽軽で気さくで頭の回転もよく村では人気者であった、その為村のある娘に娘の方から声をかけられてその家に婿入りすることになった。
婿入りしても彼は評判の猟師であり続け罠を仕掛ければこれまで通り常に獲物がかかった。それで妻も妻の両親達も彼を頼もしく思っていた。
だがある日猟に出た時に彼と共に出ていた妻の父つまりカバヤンにとって義父にあたるガムランはこう言った。
「今日は鳥を獲りたいが」
「鳥ですか」
「そうだ、鳥だ」
こちらをというのだ。
「是非な」
「いえ、妻と義母さんは鹿を獲りたいって言ってましたよ」
カバヤンは小さい目と唇、浅黒い肌の顔で言った。黒髪は縮れていて帽子の中でまとめていて赤い服とズボンを着ている。背はかなり高く剽悍な身体だ。小柄な義父と比べると随分と大きく見える。義父が着ている服は灰色で少しくたびれている感じだ。
「そうした風に」
「しかしわしはだ」
「鳥ですか」
「鳥が食いたくなった」
それでというのだ。
「鳥を捕まえたいのだ」
「それで食いたいんですか」
「だからだ」
それでというのだ。
「鳥を獲るぞ」
「では罠も」
「鳥の罠だ」
それを仕掛けようというのだ。
「いいな」
「いえ、妻と義母さんが言ったんですよ」
カバヤンは鳥だと言う義父にどうかという顔で返した、二人でもう森の中に入っていて罠を仕掛けようとしているところだ。
「ですから」
「鹿か」
「鹿を獲りましょう」
彼はあくまでこちらだと言った。
「そうしましょう」
「家の長はわしだぞ」
「それでも家族の言うことは聞かないと」
「女房や娘の言葉をか」
「そうです、家族の言葉を聞くこともですよ」
カバヤンは義父に穏やかだが確かな声で話した。
「家の長の務めでは」
「決めるのはわしだぞ」
「それでもちゃんと聞かないと」
あくまでこう言うカバヤンだった、だが義父は全く聞き入れず。
鳥の罠を仕掛けた、それを見てカバヤンも仕方なくだった。
鹿の為の罠を仕掛けた、一人で穴を掘ってそれを用意した。
そしてだ、お互いに罠を仕掛けた後で義父はカバヤンに言った。
「この森は鳥が沢山いるんだ」
「だからですか」
「こうして罠を仕掛けるとだ」
「それだけで、ですか」
「鳥が物凄く獲れるんだぞ」
「それは私も知っていますけれど」
「鹿はそれ程多くないんだ」
そうした森だというのだ。
「だから鹿の罠の用意してもだ」
「鹿は捕まらないですか」
「捕まるものか、見ていろ翌朝にはだ」
「義父さん
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