第三章
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それでだ、周りの者に酒を出させて今はそれを楽しんだ。父である皇帝にも母である皇后にも気付かれぬ様に隠れて馳走も出して口にしていた。
煬帝はこの後兄を謀で蹴落とし太子となった後で父である皇帝が倒れて隋の第二代の皇帝となった、この際父を殺したとも言われていて廃されていた兄をその子達に至るまで死を賜らせて消している。
それからは贅沢を楽しみつつ大きな政を行ったが高句麗との戦に負け続け民への負担を増やしていきやがては乱が頻発する様になり。
彼は都を後にして江都に入りそこで美女達と酒や美食に囲まれた暮らしに入った。
その際最早政のことからは一切遠ざかっていた、その結果人心をすっかりなくしてしまった彼は彼を護っていた兵達に囲まれて言われた。
「もう我々は貴方にお仕え出来ません」
「もう貴方のところにはいたくありません」
「そして貴方はあまりにも多くの罪を犯しました」
「貴方には死んで頂きます」
「そう言うか」
楊広は逃げなかった、臆してもいなかった。彼はこの状況に至っても堂々としていた。
それでだ、最早どうにもならないことを悟ると自分を囲む兵達に言った。
「毒を持って来るのだ」
「酒に入れて」
「そしてですか」
「その毒酒を飲んで死のう」
こう言うのだった。
「皇帝らしくな」
「いえ、それには及びません」
「毒は肯定に相応しい方が仰がれるものです」
「貴方は最早皇帝には相応しくありません」
「毒殺なぞされてはならないのです」
もう誇りある死も相応しくないというのだ。
そして兵達は彼を布で寄ってたかって首を締めて皇帝ではなく只の男として殺した、この時楊広はようやくわかった。
若き日晋王だった頃に道士に人相見で何故あの様に言われたのか、そのことが。
そうしてだから自分は今こうなってしまったのだと理解した、外の世界が大乱になってしまったことまでも。
そうして死んだのだった、その最期は皇帝としては実に無残なものだった。
隋の楊広即ち煬帝は今も暴君として知られその評価は実に悪い、その彼が若き日に人相見でこう言われていたことは世に伝わっていない、だがこの時に若し察していればどうなっていたか、隋という国もそこにいる民衆も彼自身も。そう思うと実に残念なことである。彼がこの時にすぐに気付いていれば。
煬帝 完
2018・5・15
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