第五章
第56話 再確認
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取り調べの結果――。
やはり、オドネルは地下都市に通じていたことがわかった。
いや。正確には、意識しないうちに地下都市と関係を持っていた。
この国の領主は、基本的に世襲である。
本人の供述や押収した資料を確認した限りでは、当代よりもずっと前から、本拠地不明の怪しげな行商人と密な関係にあったようだ。行商人らから領主に、あれやこれやと定期的に賄賂が送られていたらしい。
そしてどうもその行商人というのが、地下都市の関係者だったようなのである。
地下都市側としては、このミクトラン城を毎回コソコソと通過するよりも、行商人として領主とつながりを作っておいたほうが便利だと判断したのだろう。
地下都市の監視拠点があった首都から、地下都市までの距離は非常に遠い。連絡係はいくつもの地上の町を通り過ぎることになるが、このミクトラン城よりも地下都市側には、地上に町が存在しない。
ここは、『高速道路に入る前の最後のコンビニ』のような重要なポイントなのだ。
そしてさらに。
地下都市が国王爆殺の前準備としてオドネルを脅迫し、クロを謀殺するよう要求していた証拠もあった。地下都市側がご丁寧に作成した、「事故死に見せかけて殺すための手順書」なる資料が出てきたのである。
どうやらヤハラの調査報告から、『クロは要注意』ということが地下都市上層部に伝わっていたためらしい。暗殺の成功率を少しでも上げるため、会談の前日までにクロを事故死させておく方針だったそうだ。
まだ少しだけ記憶に残っているが、地下都市からの使節団のリーダーは、クロを見たときにかなり厳しい表情をしていたように思う。
きっと、「領主め……この犬を殺すのに失敗したな?」ということだったのだろう。
話は一通り聞いた。
さて、この男の処遇だ。
「な、なんとか命だけは……。お、脅されていたのは本当なんです!」
まだ小太りの体を震わせ、命乞いをしている。
「お前、よくそんなことが言えるな……。自分のしたことがわかっているのか」
あまりの見苦しさに、もはや国王は怒りを通り越したのか、呆れているようだ。
と、そこで、俺はコツンと足に衝撃を感じた。
――クロか。どうした?
目でそう答える。
「話は終わったのか?」
「ああ、だいたい」
「この人間は罰を受けるのか」
「たぶんな」
「お前を侮辱したから、ということでいいのか」
一瞬何を言われているかわからなかったので、頭の中の引き出しを漁って思い出す。
――ああ、あれか。
俺がこの城に来たとき。この領主が、俺は奸臣だとか、俺に振り回されて国王が気の毒だとか、クロは俺みたいなくだらん人間に世話をさ
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