第五章
第55話 勇気
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が下がってしまっているのではないか――神はその可能性を指摘しているのだ。
もしそうなのであれば、残念ながら、彼ら自身はそのような罠に陥っていることに気づいていないのだろうと思う。
だからこそ、地上の人間を見下すような、おかしな方向に行ってしまったのではないか。
「結局、地上の文明から切り離された地下都市といえども、時代の縛りから完全に逃れることはできないということだ。時代の重石というのはお前が思っている以上に重い」
「……」
「神よ」
俺が黙ってしまうと、国王が話に入ってきた。
「時が流れている以上、その重石を跳ねのけるリーダーが現れてもよいはずなのではないか?」
「……そうだな。その時代のスタンダードの壁を破るような人間も、歴史上には稀に存在する。そのような人間は次の時代の幕を開け、後の時代からは偉人と言われる」
「そのタイミングが今という可能性はないのだろうか?」
「残念だがないだろうな。こと戦の分野となると、その重石はまた一段と重い。パーティのときにお前に言ったとおり、片方の意思だけでは改善されないだからだ。
二勢力間の戦争をなくすには、双方のリーダーが偉人でないと無理であるし、世界中の戦争をなくすには、主要国のリーダー全員が偉人であるタイミングが訪れなければならない。
お前が偉人と呼ばれるカテゴリに属する人間である可能性は、十分にある。だが地下都市のリーダーがそうである可能性については、今回の事件を見る限りではゼロと言わざるをえない。今後についても、下降線をたどり続ける地下都市に、そのような人物の登場を期待するのは酷だろう」
国王は視線を落とし、「そうか」と残念そうに言った。
そして再び神を見つめた。
「では、リクが地下都市にとって偉人となる可能性はないのか? 少し発想が飛んでいるとは思うが、リクが地下都市の総裁になれば円満に収まりそうな気もするのだが」
――!?
この国王はいきなり何を言い出すんだ、と思った。
少しどころではないだろう。発想が飛び過ぎだ。
総裁を暗殺して臨時政府でも立ち上げ、俺をそこに座らせる構想でも思いついたのだろうか。
それとも、ある程度攻めたら再度降伏を呼びかけ、降伏条件に総裁交代を入れるということなのだろうか。
突然な話すぎて意味不明だった。
神の表情を見ると、やはり少し苦笑いしているような気がした。
先ほどよりも、口角が少しだけ上がっている。
「リクについては、歴史上の偉人とは性質がまったく異なる存在だ。無理だな」
「凡人で悪かったですね……。アナタ俺を撃沈しに来たんですか? とっととお帰りくださいませ」
「また何か勘違いをしているようだが、わたしはお前を貶めたつもりはない」
「ソウデスカ」
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