第五章
第55話 勇気
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
すが……。でもまさか自爆されるとは思いませんでした。しかも上層部の一人が、ですよ。その勇気は凄いですが……参っちゃいましたね」
「勇気がないからあのようなことをしたのだろう」
「え?」
「……降伏する勇気、滅ぶ勇気。それが上層部にはなかったということだろう。だから意味のない中途半端な延命策に逃げた。現時点ではそのように評価することが自然だ」
「……」
「少し休憩して心を休めるといい」
心を、か。
神にしては珍しく優しい言葉を放ってくれたわけだが、まるで体にかけていた毛布を剥ぎ取られるような感覚がして、それはそれで結構きつかった。
「無理だったんでしょうかね」
「何がだ?」
「最初から無理だったということでしょうか……やっぱり。話し合いでなんとかしようというのは」
なぜかわからないが、神に愚痴のようなことを言ってしまった。
無慈悲な回答が来るとわかっているのに。
「わたしの考えは以前に話した通りだ。文明レベルの関係で、この時代では紛争を平和的に解決することは難しい」
「確かに前に言ってましたね、それ……。でも地下都市って、崩壊前の文明を保存したまま、ということだったので。この時代のスタンダードとはまた違うんじゃないかなって、少し期待してしまっていました」
我ながら、未練がましい理屈だとは思う。
どうせまた、一言でバッサリ斬られるのかなと思った。
だが神はその双眸を一瞬光らせると、斜め後ろ下方向を向き、右手をポンと、黒くて丸いものの上に置いた。
そこで初めて気づいた。神のすぐ後ろに、今回の行軍で付き人になっていた、丸顔坊主の昭和男子ジメイがいたのである。身長差がありすぎて完全に隠れていた。
無言のサインを受けたジメイは、椅子を持ってきた。
神はそれに座って、話を始めた。
「地下都市は確かに、お前の時代の文明の延長線上にあるのかもしれない。だが、彼らは新しいものを創り出してきたわけではないのだろう? ただ単に過去の遺産を使い、それを守ろうとしてきただけだ。
彼らが気づいているかどうかは不明だが、前進する意思もなく、ただ維持しようというだけでは、その維持すらもやがて不可能となっていく」
「そういうもんなんですかね」
「そういうものだ。そして下がった分を外から取り入れられればよいのだが、そんな材料はこの時代のどこにも存在しない。地上は一度崩壊して低い状態になっているからだ。
よって、地下都市においては、ひとたび下がったものはそのままとなる。そうなると物質的にはもちろん、精神的にも徐々に水準が切り下がっていくことになる。それが千年以上も続いたらどうなるのだろうな」
「……」
千年のモグラ生活を続けるうちに、物質的だけでなく、精神的にも水準
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ