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永遠の謎
321部分:第二十一話 これが恐れその十一

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第二十一話 これが恐れその十一

 二人の写真、二人並んで立っているその写真を見てだ。まずはだ。
 王太后、王の母がだ。こう言うのであった。
「これは」
「どうされたのですか?」
「何かあったのですか?」
「陛下は。あの方は」
 息子であっても王だ。だからこう敬語で呼んだ。
「恋をされていません」
「?まさか」
「そんな筈がありません」
「いえ」
 太后はこう言うのだった。
「この目はそうです」
「目、ですか」
「それがですか」
「そうです。この目はです」
 写真にいる王はだ。上目遣いであった。そのうえで隣にいるゾフィーを見ずにだ。そのうえでその上の方を見ていたのだ。そうしていたのだ。
 それは王の癖で王はいつも上を見ている。しかしなのだ。
 太后はそれを見てだ。それで言うのだった。
「この目ではです」
「恋をされていないと」
「そう仰るのですか」
「そうです。ゾフィーを見てはいないです」
 それを見ての言葉だった。
「あの方はやはり」
「やはり?」
「やはりといいますと」
「女性に恋を抱けないのでしょうか」
 こう言うのだった。
「これではです」
「これでは」
「これではといいますと」
「ゾフィーにとってよくありません」
 ゾフィーを気遣うのだった。彼女をだ。
「愛を向けられていない。しかしです」
「しかしですか」
「といいますと」
「ゾフィーは陛下を愛しています」 
 彼女はというのだ。王を愛しているというのだ。
「陛下はあれだけの美貌の方ですから」
「そうですね。陛下の美貌はです」
「非常に素晴しいものがあります」
「誰もが愛さずにはいられません」
「そうした方だからですね」
「あの方は。外見だけではないですから」
 我が子のことであるがそれでもだ。王のその美貌は認められるものだった。
 それを話してだ。太后は話していく。
「その御心も」
「御心も非常に素晴しいですね」
「清らかな方です」
「女性を魅了せずにいられません」
 まさにそうだと話すのであった。王について。
「そうした方ですから」
「だからこそゾフィー様もですか」
「愛さずにはいられない」
「そういうことですね」
「愛している相手に愛されない」
 その矛盾する二つのことがだというのだ。
「これでは悲劇を心配せずにはいられません」
「ではこの御成婚はどうなるのでしょうか」
「一体」
「わかりません」
 太后は曇った顔で述べた。
「ですが私はです」
「悲劇を危惧されているのですね」
「そうだというのですね」
「はい。ゾフィーのことが心配です」
 王よりもだ。彼女の方がだというのだ。

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