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永遠の謎
320部分:第二十一話 これが恐れその十

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第二十一話 これが恐れその十

 王はだ。その歌劇、これから観るタンホイザーについても話した。
「タンホイザーとするならば」
「その今日の歌劇ですか」
「それはどうなるのでしょうか」
「タンホイザーならば」
「一体」
「やはりタンホイザーになる」
 その歌劇のだ。主人公なのだというのだ。
 それを話してからだ。王はゾフィーについても話した。
「そして彼女がエリザベートだな」
「そうですね。騎士と姫です」
「まさにそうなりますね」
「エリザベートだ」
 王はタンホイザーからだ。この名前に注目していった。
「シシィと同じ名だな」
「あっ、確かに」
「そうですね。タンホイザーのヒロインはあの方と同じ名前ですね」
「そうなりますね」
「言われてみれば」
「ゾフィーはシシィとは違う」
 そのことはどうしようもない。姉妹であってもだ。やはり別の人間なのだ。しかし王はここでは二人を重ね合わせてだ。そうして話すのだった。
「だが。同じ姉妹だ」
「同じ姉妹だからいい」
「そうなのですね」
「思えば縁か。シシィは私にとっては」
 愛し合う関係ではない。それとは別にだというのだ。
「鴎なのだ」
「あの方は鴎なのですか」
「鳥なのですか」
「自由な鴎だ。そして」
 そしてだとも話す。
「彼女は私を理解してくれる」
「そういえばあの方は以前より陛下に対して」
「何かと」
「そのシシィの妹」
 そのことが余計になのだった。王にとっては。
「その彼女が私の妃となるのだな」
「では陛下、それではそのゾフィー様とですね」
「共に歌劇を観られますか」
「今宵は」
「そうする」
 王はそのことについてあらためて言った。そうしてだった。
 王立歌劇場に向かう。入るのはロイヤルボックスだ。その中に進むところでだ。
 前にいた。彼女がだ。
「陛下」
「来て頂けましたね」
「御呼び頂き有り難うございます」
 白い清楚なドレスを来ただ。ゾフィーが待っていた。その彼女が王に一礼してから話す。
「では今宵は」
「舞台を共に観ましょう」
 そうしようとだ。王はゾフィーに話すのだった。
「それでは今より」
「歌劇場に」
「参りましょう」
 こうしてだ。王は己の右手を差し出した。
 するとゾフィーはその右手に己の左手を添わせてだ。共に並んだ。
 そのうえで歌劇場に入りロイヤルボックスに姿を現すと。観客達は。
 誰もが立ち王とゾフィーに対して拍手を送る。それを見てゾフィーは満面に笑みを浮かべる。
 しかし王はだ。その中においてだ。
 醒めた目をしていた。その目でいたのだ。
 だがゾフィーはそのことに気付かない。他の者も。
 誰もが王は幸せな婚姻に至ると思っていた。しかしだった。

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