第四章
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家の扉が開いた、庭も玄関もない家だったので扉を開けるとすぐにそこからだった。
白く長い白髪の老婆が大きな顔で出て来た、だが。
紗佳はわかっていたし健児も彼女から話を聞いていたので驚かなかった。それで老婆はすぐにだった。
いささか拍子抜けした顔になったがそれで言った。
「ふむ、紗佳ちゃんか」
「お久し振りです」
紗佳は老婆に笑顔で応えた、見れば老婆は地味な色の着物を着ている。
「お元気そうですね」
「うむ、この通りな」
老婆は紗佳に笑顔で答えた、顔の大きさは普通になっていて背は紗佳より十センチ低い感じである。
「わしは健在じゃよ」
「それは何よりです」
「それでこっちのじゃ」
老婆は紗佳の横にいる健児を見て彼女に問うた。
「でかい男の子は誰じゃ」
「はい、彼氏で」
「ふむ。おばちゃんとポポちゃんに紹介したか」
「先程」
「そうか、紗佳ちゃんもそんな歳になったか」
「大学を卒業しましたら」
紗佳はその薔薇色の頬だけでなく顔全体をぽっと赤くさせて老婆に話した。
「二人共就職して」
「成程のう、この前まで小さかったのにのう」
老婆はまるで祖母の様に言った。
「それがか」
「そうなりました」
「わかった、ではこれからじゃな」
「彼のことを糸引き娘さんにもです」
「紹介してくれるのじゃな」
「それでお邪魔しました」
「はじめまして」
健児も老婆に挨拶をした。
「山北紗佳ちゃんとお付き合いさせている大石健児です」
「そうか」
「幼馴染みで同じクラスで」
「付き合っておるか」
「そうです」
「わかった、わしは糸引き娘じゃ」
老婆は健児に笑って自分の名を名乗った。
「宜しくな」
「糸引き娘さんですか」
「うむ、婆なのにと思ったじゃろ」
笑ってだ、糸引き娘は健児に自分の名を言ってきた・
「そうじゃな」
「それはその」
「こういうことじゃ」
ここでだ、糸引き娘は。
自分の身体を右から左に一回転させた。するとだった。
外見が若く美しい娘のそれになっていた、それで健児も納得した。
「だから娘なんですね」
「わしの名はな」
「そういうことですか」
「うむ、若い娘の姿に見惚れたり声をかけた者にな」
「お婆さんの顔になってですね」
「驚かせるのがわしじゃ」
そうした妖怪だというのだ。
「家に来たお客さんには先程の様にな」
「お顔をいきなり出してですか」
「驚かせるのがじゃ」
それがというのだ。
「もう一つの驚かせ方じゃ」
「それもですね」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
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