72話:皇女
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もなれば、その時点ですべてを察してしまいそうでもあるな」
陛下が楽し気な雰囲気に変わられた。リューデリッツ伯もお忙しいお立場のはず。頻繁に時間を取りたくても、こういう話がなければ難しいのだろう。当日はディートリンデも同席させたい。拙いなりに礼儀作法を確認しておかなくてわ。
宇宙歴788年 帝国歴479年 8月中旬
首都星オーディン グリューネワルト邸
ジークフリード・キルヒアイス
「キルヒアイス、お前はよく淑女たちの相手を笑顔でできるなあ。おれはどうもああゆう場は苦手だ。『機械男』の講義の方が100倍楽しめる。とはいえ、裏の事情を伯から聞かされてお願いまでされては断るわけにもいかない。頭の痛い事だ」
「ラインハルト様も十分楽し気にされておられましたよ。私たちに期待されているのは、教師役ではなく、親しい年上の友人役です。あまり気にされる必要もないと思いますが......」
リューデリッツ伯が元帥に昇進され、祝賀ムードに包まれた生活が落ち着いた頃合いで、皇帝陛下とベーネミュンデ候爵夫人との間に生まれたディートリンデ皇女殿下の後見人に伯が指名されてから数ヵ月。同じ後見人を持つ者同士という事で、『ご機嫌伺い』という役目が新たに加わった。なんだかんだと愚痴をこぼされるが、ラインハルト様が心底嫌がってはいないことを、私は知っている。
ディートリンデ皇女殿下の後見人にリューデリッツ伯が指名される事が公表される数日前、話があると2人揃って、応接室に呼び出された。当初は私が聞いて良い話か判断しかねた為、辞退しようとしたが『側近があるじの置かれた状況を把握せずにいてどうする?』と伯に指摘され、任務の合間に顔を出されるシェーンコップ卿から『軍人として栄達する約束手形』になりつつあると聞かされた、伯爵自ら入れてくださったお茶を飲みながら、後見人になる事を承諾した経緯を話して頂いた。
12歳の幼年学校生が冷静に聞くことが出来ない話も出たが、それでも伯はかなり言葉を選んで話されていたと、振り返って気づいた。第一子が地球教の陰謀で害されたこと。ブラウンシュヴァイク・リッテンハイム両家に降嫁した御二人と違い、後ろ盾が無い為いないも同然の扱いを受けている事。余命が短いと診断されている皇太子が身罷られ、陛下に万が一の事があれば、良からぬことを考える輩に良いように利用されかねぬこと。そして明言はされなかったが、一歩間違えればアンネローゼ様が同じ状況になったであろうことを伝えられた。
ベーネミュンデ候爵夫人が実家に実質『売られた』のだと聞いた時は、ラインハルト様だけでなく私も義憤に駆られた。それから幼年学校とリューデリッツ伯流の英才教育の合間に、『ご機嫌伺い』をする事となった。ただ、実家の困窮を理由に寵姫になったという共通点から、慣れない後宮に戸
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