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永遠の謎
318部分:第二十一話 これが恐れその八

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第二十一話 これが恐れその八

「プロイセン王はドイツを統一すればだ」
「そうなればなのですか」
「プロイセン王ではなくなる」
「といいますと」
「皇帝だ」
 皇帝、この言葉が出て来た。
「ドイツ皇帝になるのだ」
「ドイツ皇帝ですか」
「ドイツを一つにするのは王ではないのだ」
「王はドイツには多くいますね」
「そうだ。それでどうして王が統べようか」
 こう話すのだった。
「王の上に立つのは皇帝だ」
「その神聖ローマ帝国皇帝ですね」
「その通りだ。神聖ローマ皇帝はもういない」
 神聖ローマ帝国そのものが存在しなくなった。ナポレオン、バイエルンを王国にしたその彼がだ。既に有名無実となっていたその国を完全に消し去ったのだ。
 それを話してだ。王はまた言った。
「新たなドイツ皇帝となるのだ」
「王の上に立つ皇帝ですか」
「それになるのだ。プロイセン王はだ」
 こうした話をしてであった。王はだ。
 ホルニヒに対してだ。こんなことも述べた。
「臣下とだ。私を見るようになる」
「陛下を」
「皇帝は王の上に立つ。法皇と同じく」
 それが皇帝なのだ。言うならば皇帝は月なのだ。法皇を太陽としたならばだ。王の頭上にある天空のだ。そこにある存在だというのだ。
「それもまた時流にあるものだ」
「そうなのですね」
「私は臣下になるつもりはない」
 王としての言葉だった。
「何があろうともだ」
「しかしそれでもですね」
「時流がそれを望んでいる。仕方のないことだ」
 こうした話をしたのだった。そしてまたホルニヒに話した。
「では」
「では、ですか」
「傍に来るのだ」
 こう言って誘った。
「飲もう、二人で」
「そうして宜しいのですね」
「そうだ。今は二人で飲みたい」
 テーブルの上のワインとガラスのグラスを見て話す。
「そうするか」
「はい、それでは」
 ホルニヒもだ。王の心を受け取りだった。
 そうしてそのうえでだ。王の向かいの席に来て話した。
「御言葉に甘えまして」
「そうしてくれるか」
「陛下の御言葉ならば」
 どうするかというのだった。
「そうさせてもらいます」
「有り難い。私の憂いは消えない」
 その目にだ。実際に憂いを漂わせての言葉だった。
「どうしてもだ。消えはしない」
「では余計に」
「飲むべきだな。酒はいいものだ」
 そのだ。ワインのボトルを見ての言葉だった。白だ。その白ワインを見ているのだ。
「飲むとその分だけ憂いを消してくれる」
「だからこそですね」
「今は飲もう」
 ホルニヒにも話す。
「こうしてな」
「畏まりました。それでは」
 こうしてだった。王は話の後でホルニヒと美酒を楽しむのだった。

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