316部分:第二十一話 これが恐れその六
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第二十一話 これが恐れその六
「あの御仁はな。プロイセンに近い」
「そうだ。親プロイセン派だ」
「そうした意味でホルンシュタイン伯爵と同じだ」
「御二人はビスマルク卿とも度々会われている」
「それはどうなのか」
「まずいのではないのか」
こうだ。彼等は話していく。それは追うの周囲だけでなくバイエルン全体で話されることだった。彼等にとっては話さざるを得ないことだった。
「我々はプロイセンは嫌いだ」
「彼等はプロテスタントだ」
「それに北だ」
「東にある」
ドイツといっても一つではないのだ。まずカトリックとプロテスタントがある。宗教的な違いがドイツにとっては実に大きいものなのだ。これはルターの頃から変わらない。程度の違いはあっても。
そして南北、東西という地理的な違い。プロイセンは北であり東にある。それに対してバイエルンは南であり西だ。そうした意味でも彼等は正反対なのだ。
それもありだ。さらにだった。
「プロイセンは自分達のドイツを築こうとしているのだぞ」
「軍事的、経済的、政治的にだ」
「そのプロイセンに近い人物を首相にするとは」
「陛下は何を御考えなのだ」
「国民は反発するぞ」
「それも御承知なのか」
「それでされているのか」
王の資質への疑問にもなっていく。
「あの方は何を考えておられるのだ」
「プロイセンに近い人物を首相にする」
「議会も黙ってはいない」
「政治に混乱をもたらしていいのか」
「ワーグナー氏だけを考えているのだろうか」
「彼さえ戻ればいいのか」
「あの金食い虫が」
次第にだ。王はワーグナーのことだけしか考えていないのではないのかという見方も出て来た。そしてこのことは王の耳にも入った。
王はそれを聞いてだ。王宮においてだ。ホルニヒに話すのだった。
白をベースにし青と金の装飾で彩られている。天井にはバロック調の模様があり床はビロードの絨毯だ。その部屋の見事なソファーに座りながらだ。彼に話すのだった。
「彼を首相にしたことはだ」
「ホーエンローエ卿ですね」
「そうだ、それは確かにワーグナーのこともある」
王もそれは認めた。
「私にとって彼が傍にいるのといないのでは全く違う」
「だからこそあの方を首相にされたのですか」
「他の者達も全て更迭した」
王はさらに話した。
「ワーグナーを好まない者達はな」
「閣僚、そして宮廷の重役からですね」
「そうした。だがそれだけではないのだ」
「ではやはり」
「そうだ。プロイセンの勢いは止まらない」
政治の話だった。内政と外交がここでは一つになっている。
それを把握したうえでだ。王は話すのだった。
「それもありだ」
「ホーエンローエ卿を首相にされたのですか」
「選択肢はないのだ」
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