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提督はBarにいる・外伝
彼願白書・逆さ磔の悪魔編-Side B-
舞い込んだ厄介事
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後悔はない……のだと思う』

「後悔じゃねぇならなんだってんだ?禍根か?」

『ほんの少しの、自覚のある割り切られたハズのサバイバーズ・ギルトの半端な余り……なのだろうね、コレは。まぁ、そんな物でも年月を経れば多少は心持ちを変える位の事はするらしくてね?囮を捨て石にするのを嫌悪する程度には、私も日和見になったらしい』

 な〜にがサバイバーズ・ギルトだっつの。要するに、昔犠牲にした奴等に対する罪悪感で苦しんでるだけじゃねぇか、気取った言い方しやがって。




「そりゃ日和見になったんじゃなく、欲張りになったんだろ?昔より。アンタはもっと自分の欲求に素直になりなよ、今俺がアンタの絵図に乗っかって、アンタから見返りを求めているみてぇによ?」

 電話越しだが、相手の浮かべている表情が手に取るように解るぜ。あの狐野郎は今間違いなく、苦笑いを浮かべているハズだ。俺もニヤリと笑いながら胸ポケットの煙草を取り出し、火を点ける。

『仕事の内容より先に報酬の確認かね?欲張りはいいが、足下にも気を付けたまえよ?』

「仕事を受けるか否かの権利があるなら、報酬の質で決めるのは当然だろ?プロなんだからよ。第一、アンタが俺をハメようって気なら、わざわざ履歴の残る普通の電話回線なんぞ使わねぇさ」

 元内務省の役人なら、足跡の残らねぇ連絡方法の1つや2つ、持っていても可笑しくねぇ。敢えてそれを使わずに連絡を寄越している時点で、俺を騙す魂胆が無いのは読めていた。それに、この野郎は『やり損なった時』を想定してその備えを万全にしてから動くタイプ、つまりは似た者同士だ。考える事は自ずと読める。

『……やれやれ、鼻のいい交渉相手は骨が折れる』

「お互い様だろ、バカ野郎」

 あの陰険な狐は、俺がほぼ間違いなくこの話を受ける事を確信してから電話をしてきている。そういう所には鼻の利く野郎だ。

『……わかった、報酬については考慮しよう。此方が渡せるだけの資料も送る。それを精査してから引き受けるか否か、判断してくれ』

「あいよ、ブルネイで待ってるぜ」

 そう言って返事も聞かずに通話を切る。さて、机の上に置かれたすっかり冷めちまったコーヒーを啜ったら早速動くとするかね。

「金剛、主だった連中に声かけて来い。化け物退治のブリーフィングだ。大淀は資料を集められるだけ集めて纏めておいてくれ、時間はねぇぞ……急げ!」

 金剛と大淀はコクリと頷くと、バタバタと執務室を出ていった。

「しかし……ビッグパパよりどうせならBIGBOSSにしろよ、呼び方」

 そっちの方がカッコいいじゃねぇか。




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