310部分:第二十話 太陽に栄えあれその二十二
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第二十話 太陽に栄えあれその二十二
「自身が傷つくとわかっていてもそうするしかないものなのだ」
「王として。国を治める者として」
「そうするしかないのですか」
「あの方もまた」
「素晴しい王であられる」
王への想いを。再びありのまま口にする。
「だがそれでもだ」
「その御心は」
「傷ついてしまう」
「どうしても」
「それがあの方にとって不幸なのだ」
その不幸は忌んでいる。だがそれでもなのだった。
「避けられない不幸なのだ」
「そしてその傷を癒せるのは」
「それができるのは」
「白銀の騎士だけなのだ」
やはりだ。彼だけなのだった。
「あの人物しかいないのだ」
「この世にはいない彼が」
「その彼だけが」
「世界は一つではなく」
今度はこんなことを言うビスマルクだった。
「そして互いに行き来することもできないのだ」
「見ることはできても」
「それはできないのですか」
「どうしても」
「あの方はあの世界に入り」
そしてだというのだ。
「あの騎士と共にいたいのだ」
「適わぬ夢ですね」
またしても側近の一人が話す。
「それは」
「あの世界へ向かう道も扉もないのだ」
だからだと。ビスマルクは話した。
「見られるだけなのだ」
「鏡ですか」
「そこに映る世界なのですね」
「それだけなのだ」
まさにそうだというのだった。ビスマルクはそう話す。
「あの方はその鏡の世界に映る騎士を愛され」
「そして焦がれておられる」
「そうなってしまわれていますか」
「あの方があの世界に行くことができれば」
こうも言った。遠くを見る目になって。
「それはどれだけ幸せなことなのか」
「そうですね。あの方にとって」
「それができればどれだけいいのか」
「幸せはそこにあるのですね」
「あの方にとっての幸せはな」
まさにだ。そこにだと話してだった。
ビスマルクはバイエルン王について話していく。そしてそのうえでだった。彼のことを気にかけていた。不安に満ちたその心で。
第二十話 完
2011・5・15
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