第五章
第53話 使節団
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地下都市の使節団。彼らは約束どおりに城に現れた。
当初、俺は城下町の入り口のところまで迎えに出る予定だった。
しかし前日の火事により、俺が命を狙われている疑いが濃厚になったため、兵士のみでの出迎えに変更された。
こちらが待機していた部屋に届いた連絡によると、使節団は中年男性と若年男性、そしてやや若めの女性の、合計三名とのことだ。
――人数が少なくないか?
少しだけだが、違和感を持った。
使節団というくらいであるから、最低でも十人くらいの人数で来るのかと思っていた。
だが、「護身用と思われる剣を自主的に守衛に提出し、持ち物検査でも拳銃やその他未知の武器は所持していなかった」という報告を聞いたときには、少し安心した。
あくまでも、話し合うために来た。他の目的ではない――そういうことで間違いないだろうと思った。
続いて、三人が兵士に案内され、城の控室に入ったという報告が部屋に届く。
今俺らが待機している部屋は、引き続き子供たちとその師匠が寝泊まりしている大部屋である。
現在、部屋の中にはカイルとタケルのほか、エイミー師弟とレン師弟が待機している状態だ。
そして部屋の外には、兵士がほぼ隙間なく詰めている。その全員が首都の兵士たちだ。この城の兵士ではない。
国王の指示だと思うが、城の中も外も、首都から来た兵士であふれかえっていた。
この上ない厳戒態勢である。
この後の段取りは、まず俺が三人の控室へ挨拶に行くことになっている。
「西暦二〇十五年から来ましたオオモリ・リクです」と自己紹介し、そこで相手も名乗ってくるだろうから、その名前を記憶。そして戻ってきてから、三人が何者なのかタケルに確認を取る――。
それが打ち合わせで決めた段取りである。
「いよいよだね。大丈夫? リク兄ちゃん」
左手にメモ用紙、右手にペンを握ったまま、レンがこちらの覚悟を確かめてきた。
「ああ、大丈夫だ……と思いたい」
断言できないのは残念だが、観察眼のある彼に嘘をついたところで見透かされるだけだ。素直に自信がなさそうに答えた。
行軍中、俺はレンとその師匠に、ほぼ毎日聞き込みを受けてきた。
彼らは、この時代に来てからのクロの軌跡を、本にまとめ上げるつもりのようだ。
なぜそのようなことをするのかと問うてみたところ、以前にジメイ経由で神託があったらしい。おそらく、クロをこの時代に呼び出した神からの指示だと思われる。
記憶が確かならば、クロを呼び出した神は、その目的を「失われてしまった人間と犬とのつながりを復活させること」としていたらしい。
クロの伝記を残させようとしているのも、その一環なのだろう。
「大丈夫だよ、きっと」
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