第五章
第53話 使節団
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隣にくっつくように座っていた金髪の少年カイルが、そんなことを言ってくる。
「……お前は落ち着いてるな」
「だって、今までもなんとかなってきたでしょ。今回もうまくいくって」
彼はこちらを見上げて、根拠のないことを力強く断言した。
なんというか、相変わらずである。そしてそれが、意外なほど心強い。
「よし。じゃあ、あちらの控室に挨拶しに行ってくる」
俺が立ち上がると、カイルとクロも立ち上がる。
それを見たタケルが、手枷を付けた姿で座ったまま声をかけてきた。
「リクさん。相手の名前、忘れないようにしてくださいね」
「ああ、三人だけだから大丈夫だと思う。戻ってきたらよろしく頼むぞ」
「はい」
「リク! 行ってらっしゃい!」
「痛っ……なんで僕を叩くんですか……。では待ってますね。リクさんお気をつけて」
タケルの背中を力強く叩いたのは、エイミーである。
彼女も師匠にあたる人物と一緒に来ているのだが、その師匠というのは医者である。
彼女が医者の弟子というのはイメージとのギャップが凄いが、面倒見がよいのは間違いないので、適性はあるのかもしれない。
控室の前に着いた。
忘れ物がないか再度確認する。
壊れたスマートフォン、内定が決まったときに両親から貰った腕時計、山口県に本店がある某服屋のパーカー、財布……。
ヤハラ経由で俺の素性は伝わっていたと思うが、これでもかというくらい俺の時代の証拠を揃えた。
クロについては、まだ相手に直接姿を見せない予定だ。扉の手前で待機させる。
これはヤマモトの発案だ。「手の内はなるべく見せないほうがよい」というのがその理由らしい。
ノックする。
「入ってもいいですか?」
どうぞという声が聞こえる。
大きく深呼吸をしてから、扉を開けた。
***
タケルは幸いにも、三人全員について知っていた。
それぞれが地下都市でどんなポジションの人間なのか、というところまで判明した。
使節団の代表がオサダ・タカオという中年男性。上層部の一人で、組織図上はスパイだったヤハラの上司にあたる。年齢は四十代後半。
もう一人の男性はハヤシ・トキオという名の若者で、タケルと同じく戦闘員として育てられた人間であり、普段は地下都市の警備を担当しているとのこと。年齢はまだ二十歳程度らしい。
そして女性はヤガミ・シオン。十代の頃は戦闘員だったが、現在は中央で総務を担当しているらしい。年齢は三十代半ばから後半くらいではないかという話である。
控室への挨拶も無事に終了し、いよいよ本番を迎える。
この城で一番大きな会議室。大きなテーブルには、普段は二十四個の椅子が並べられているらしいが、今日は
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