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魔法少女リリカルなのはANSUR〜CrossfirE〜
遥かに遠き刻の物語 〜ANSUR〜 V
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ラピスの心に重く圧し掛かるある怪物が生まれた。それの名は絶望。ラピスは、自分の死をここに来て感じ取ってしまっていた。

(どうすればいい!? こんなデタラメな魔術師なんて聞いた事が無い!)

宙空に浮遊し、放たれるのを今か今かと待ち続ける神器群を見て、ラピスはそれでも諦めずに必死に思考を巡らす。放たれてきた神器のそのほとんどが、ラピスの“フォイルニス・ブルート”のランクを超えている。つまりこれ以上、“フォイルニス・ブルート”で神器群を弾くという防御を取ると、体力より先に“フォイルニス・ブルート”が砕かれる。
それに、先程の解放された“神槍グングニル”との衝突。アレが致命的だった。あの衝突の所為で、“フォイルニス・ブルート”の全体にヒビが入っているのだ。良くてあと数回の攻撃で砕け散る。ラピスはそう判断した。

「ヨツンヘイムは必ず根絶やしにする。元はそちらが仕掛けてきた戦争だ。はぁはぁはぁ・・・それ相応の覚悟はあるだろう?」

「・・・化け物め・・・!」

ラピスの悪態。ルシリオンはそれを黙って受け止め、「消えろ、軍神の戦禍(コード・チュール)!」再度神器の雨をラピスへと落とした。しかし最後まで諦めないラピスは、魔力を全て身体強化に回し、神器群を回避、または弾いた。それを何度も繰り返したが、終わりは突然に起こった。

「しまっ・・・!」

“フォイルニス・ブルート”が粉々に砕け散ったのだ。神秘を打倒するにはそれ以上の神秘を以ってあたるべし。それが魔術師の鉄則だった。“フォイルニス・ブルート”の神秘を上回る神器群。それを弾き続けたことでついに限界を超えて壊れてしまったのだ。こうなると、ラピスに生き残る術はない。一斉に襲いかかる神器群を目に焼き付け、ハリネズミのように全身から神器を生やした彼女はその命を失った。

『う゛・・・!』

串刺しされ息絶えた1000人という死体を見て、なのは達は吐き気を堪え視線を逸らす。唯一の救いは、血の臭いが判らないこと。一種の夢の中であるこの世界。彼女たちに今ある五感は視覚と聴覚、触覚。それ以外は働いていないため、臭いが判らなくなっていた。それから1分ほどの沈黙が流れた。

「ねえ・・・さま・・・。姉様ぁ・・・。ゼフィ姉さ――ごふっ・・・げほっげふっ!」

死体の中でルシリオンは最愛の姉を呼び、吐血した。今の未熟な彼にとって、“グングニル”の完全解放は自殺行為だった。“グングニル”から担い手として認められていない内の完全解放。その代償として、ルシリオンの体内と魔力炉(システム)はボロボロになっていた。なのは達は無駄と知りつつ、跪いて泣き、吐血を繰り返すルシリオンへと近付こうとした。

『これが私の始まりだ』

なのは達の背後から声がした。一斉に振り返り、その声の主を目にする。
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