暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第五章
第52話 黒い火
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ポカリと一回叩いた。



 ***



「どうだった?」

 部屋をあとにして廊下に出ると、女将軍ファーナが寄ってきて声をかけてきた。

「陛下に頭を叩かれました」
「そうなのか? リクが無事だという知らせがあったときは、陛下はずいぶん喜んでいたが」
「……」
「これは愛のムチというやつだな。そうか、なるほど」

 よくわからないが、勝手に納得して去っていった。

 そして次はヤマモトがやってきて、「打ち合わせの時間までは、子供たちが寝ていた大部屋で待機するように」と伝えられた。
 子供たちは今それぞれの仕事があって不在のようで、タケルとカイルだけがその部屋で待機中らしい。

 ――さて。

「クロ、ありがとな」

 歩きながらあらためて礼を言う。

「何か褒美が欲しくなったりはしないのか? 希望があれば用意するぞ。俺が用意できるものであれば」

 クロは目を伏せたまま、少しだけそのまま歩いた。
 そして俺のほうを振り返り、答えた。

「いや、要らない」
「そうか。相変わらず欲がないな」
「……私はあれで十分だ」

 ん? 『あれ』?
 何かあげたっけ?

 そう思いながら、部屋に向かった。
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