第五章
第52話 黒い火
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らず、火事ときた。あまりにも不自然すぎる。おそらく、お前を殺すための放火だ」
「やっぱりそうなんですかね。でも二階で逃げ遅れて死ぬ確率って、そんなに高いように思えないんですが。現に俺、助かってますし。暗殺にそんな不確かな手段を使うもんですか?」
国王は首を巻いていた腕を右だけ外し、俺の頭をポカリと叩いた。
「お前は火の怖さも知らぬのか……。寝ているときの火事は、熱さで起きたときにはもう手遅れのことがほとんどなのだ。燃え広がり過ぎていて逃げ道が無かったり、毒ガスを吸い込んでしまって体が動かなくなったりしてな」
「えっ、そうなんですか?」
「そうだ。今回全員無傷で助かったのは奇跡だぞ」
「ひえー……」
それは初めて知ることだった。
たまに、火事で二階にいて逃げ遅れたというニュースが流れるたびに、「なんで二階で逃げ遅れるんだろう?」とは思っていたが。そういうことだったのだ。
俺は実際に火災現場を見たことなどはないし、身内に経験者もいない。
火を舐めていた。
では、俺や兵士たちが助かったのは、もしや――。
「どうせクロが早めに気づいてお前を起こしたのだろう。礼を言っておけよ」
「やはりそういうことですか。わかりました。クロ、ありがとう」
目の前で体を巻くように座っていたクロは、少しだけこちらに目線を合わせると「ああ」とだけ言って、また目線を外した。
この照れ屋さんは、正面から感謝されるのはまだ苦手らしい。
「でも俺を暗殺って、意味不明なんですけど」
そう疑問を言うと、国王はまた腕を右だけ外し、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回した。
「犯人にとっては、お前を暗殺する価値があるのだろうよ。少しは自覚しろ……お前はこの時代の普通の人間ではないのだぞ? 真相はまだ分からぬが、余は領主のオドネルに何か重大な隠し事があるのだと思っている。単にお前が気に食わぬという理由だけではないはずだ」
そう言われれば確かに、単に「気に入らないから」という理由だけで、他の兵士ごと焼き殺すということはあり得ないだろう。何か他の理由があることになる。
もちろん今すぐに思い当たるものはない。
「この件については、ファーナに極秘調査を依頼した。どのみち証拠が挙がらないと処分もできぬ。最悪、証拠が見つからなくてもお前を無断で閉じ込めたという理由で罰するつもりではあるが、当面はただの火事として扱うしかない。
お前に対する警備の手配などはこちらでやる。だからお前は余計なことを考えるな。今日の打ち合わせと明日の会談に集中しろ。いいな」
「はい。わかりました」
気を遣うつもりが、逆に気を遣われた。
なぜ俺はやることが裏目に出てしまうのだろう。
国王は背中から離れると、また俺の頭を
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