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緑の楽園
第五章
第52話 黒い火
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!」

 それを合図に、兵士から次々と飛び降りていく。

 カイルが俺の尻を叩いてきた。行けということだ。

 振り返って、クロの前でしゃがむ。
 嫌でも目に入ってくるクロの背後の景色は、すでに兵舎のものではなかった。
 ただただ燃え盛る、火の海。

「クロ、俺が抱えて飛び降りる。覚悟はいいか?」
「すまない。頼む」

 俺はクロを抱えた。
 正しい犬の抱え方などはわからない。ゆっくり考える暇もない。
 適当に、前足と後ろ足の付け根あたりを包むようにして持ち上げ、手前に寄せて体に密着させた。

「あのさ。こんな時だけど」
「なんだ」
「抱えるのは初めて、かな」
「……そうだな」
「ちゃんとした抱え方、わからないから。苦しかったらごめんな」
「大丈夫だ」

 すでに散々あぶられていた自分の体は、全体が火照っていた。だがそれでも、クロの体温はしっかり感じた。

 そのまま窓に向かい、下にダイブした。



 ***



「そこに座って頭を出せ」

 国王がこの城に滞在中、使うことになっている部屋。
 俺は事件を知った国王に呼び出されて来たのだが、入るなりそんなことを言われた。

「え? あ、はい。こうですか」

 正座で座ったら、国王に頭をポカっと叩かれた。

「痛っ……」
「バーカ」
「あの。前にも同じようなことを言ったかもしれませんが、国王が国民に『バーカ』はいかがなものかと――」
「バカに『バーカ』と言って何が悪い」
「……」

 国王は背後に回ると、後ろから抱き付くようなかたちで、俺の首に手を回してきた。
 そしてすぐ耳元に顔を近づけてきて、ささやくように話し始めた。

「何か異変があればまず報告が基本だろ。一人だけ変なところに入れられたのであれば、まずその時点で言いに来るべきだったはずだ。仕事は報告、連絡、相談だ。違うか?」
「いやあ、違わないです……」

 国王がわざわざ小声でしゃべっている意味には、なんとか気づいた。俺も小声で返す。
 部屋の外にはヤマモトや女将軍などが控えているが、万一ということもある。
 そう。聞き耳を立てている領主側の人間がいるかもしれないためだ。

「またお前の考えていたことを当ててやろう」
「はあ」
「会談間近の余に余計なことを考えさせまいとして言わなかったのだな」
「……相変わらず正確なことで」
「気遣いはありがたいが、今回はすぐ言うべきだったな。お前が廃屋の兵舎に入らなかったら、今回の事件は起きなかったかもしれぬぞ」
「どういうことですか?」

 国王がさらに声を潜めた気がした。

「わざわざお前が引き離されたタイミングで、しかも兵舎の周りは城側の警備の者が見回りをしているにもかかわ
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