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永遠の謎
305部分:第二十話 太陽に栄えあれその十七
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第二十話 太陽に栄えあれその十七

「それが大きな悲劇にならなければよいが」
「悲劇、それにですか」
「なりますか」
「危ういというのですか」
「危うい」
 まさにだ。その通りだというのだった。
「非常にだ」
「無理解が悲劇を起こすのですね」
「理解しているつもりの無理解がだ」
 全く違うものがだ。そうなるというのだ。
「何かを最もわかっていると言う者こそその何かを最もわかっていないのだ」
「わかっていると自惚れているだけなのですね」
「それに過ぎないのですね」
「そうだ。それはバイエルンの者達も同じなのだ」
 まさにそうだというのだ。
「あの方を理解している者はあの方の傍にはいない」
「ワーグナー氏もいませんし」
「あの御仁はスイスにいますし」
「それならば」
「あの方は孤独だ」
 まさにだ。そうだというのだ。
「まさにエルザ姫だ」
「最初の窮状に陥っている状況のですね」
「あの姫だというのですね」
「そうだ。あの状況なのだ」
 ローエングリンを待ち願うだ。その姫だというのだ。
「だからこそローエングリンが必要なのだが」
「ローエングリンはいない」
「現実にはですか」
「いないのですね」
「そうだ。あの白銀の騎士はこの世には現れ得ないのだ」
 救世主は。いないのだった。
「何があろうともだ」
「ではそれでは」
「あの方はこのまま」
「その御心を」
「少なくとも御成婚ではだ」
 そのことに話が戻った。ビスマルクは戻した。
「あの方は幸福にはなれない」
「やはりですか」
「そうなのですか」
「こう言っては信仰を疑われるが」
 それでもだとだ。ビスマルクは言うのだった。
「神は時として。真に残酷だ」
「残酷ですか」
「神は」
「何故あの方の御心は女性にして」
 そうしてだというのだ。心は女性でありながら。
「御身体は男性のものにされたのだ」
「それこそがあの方の不幸ですか」
「御心は女性で御身体は男性」
「そのことが」
「しかもだ」
 尚且つであった。王にとっての不幸はまだあるとだ。
 ビスマルクは嘆きを漏らしてだ。話すのだった。
「そのどちらもだ。美麗なのだ」
「清らかなお心にですね」
「そしてあの端麗な容姿」
「そのそれぞれがですか」
「それが問題なのだ。この場合美麗なのは災厄となる」
 美しいことが災厄となる。それはだ。
 今ビスマルクの周りにいる者達にとってはだ。わからないことだった。それでだ。
 彼等はいぶかしみながらだ。彼に尋ねるのだった。
「美麗であることが災厄になるのでしょうか」
「美麗はそれだけで幸福をもたらしてくれますが」
「そうではないのですか」
「違うのですか」
「そうだ。美麗は多くは幸福になるが」
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