第九話 枕カバーを見るのが辛い
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せるにはそれなりの理由が居る。カストロプの反乱はその理由になり得る。足元で反乱が起きる程帝国の統治力は不安定になっている。外に出て行く余裕が何処に有る? というわけだ。誰も否定は出来ない。
リヒテンラーデ侯は内政重視に傾いた。フリードリヒ四世の健康に不安が有る事も一因なのかもしれない。平民の不満を解消し大貴族を抑制し政府の力を強化する事で現状を乗り切ろうとしている。つまりだ、内政重視とラインハルトの抑圧は同じコインの表と裏なのだ。ラインハルトもその辺りの事は薄々感じているだろうな。
となると俺が考えた捕虜交換というのはリヒテンラーデ侯にとっては極めてナイスな発案でありラインハルトにとっては極めて余計な発案だったという事になる。ラインハルトが俺に不快感を抱くのは俺とリヒテンラーデ侯が協力してラインハルトを抑えようとしているように思えるのだろう。的外れとは言えない。俺はただリューネブルクに頼まれたから捕虜交換を提案した。そこにはラインハルト抑圧の意思はない。だがリヒテンラーデ侯がそれを利用する事を考えた。余計な事をする爺だ。
今日の祝賀会への参加、皇帝の呼び出しもその流れで見るべきだろう。多分、フリードリヒ四世はリヒテンラーデ侯に俺を褒めてくれと頼まれたのだ。理由はラインハルトだろう。ラインハルトは熱心に出兵を訴えていたと聞く。だがリヒテンラーデ侯にとってラインハルトは簒奪の為に出征を望む小煩い存在でしかなかった筈だ。
だから出征を却下すると同時に皇帝を使ってラインハルトの前で俺を褒めたのだ。フリードリヒ四世は捕虜交換だけでなく間接税の軽減の事も言った。臣民が喜んでいるとも。つまり内政重視の政策を擁護する発言をしたのだ。リヒテンラーデ侯はラインハルトに対し帝国の政策は内政重視だ、ギャーギャー騒ぐなと言っている。
出征の却下が今日になったのも俺に出席しろと命令がきたのも全部リヒテンラーデ侯の差し金だろう。つまり、あの爺は俺を使って帝国の政策は変わったのだと皆に報せたのだ。自分で言えよ、なんで俺を使うかな。恨まれるのは俺で自分は知らぬ振りか? 性格悪いわ。
次のレポートは如何しようか? 内政面に関わるのは止めよう。純軍事的な物が良いな。でもなあ、適当なのが……。
「エーリッヒ!」
押し殺した声だった。気が付けば目の前にギュンター・キスリングが居た。如何いうわけか溜息が出た。
「何をしている」
あれ、怒ってる? 顔が怖いぞ。出来るだけにこやかに行こう。スマイル、スマイル。
「涼んでた。九月になったとはいえまだ暑いね」
「うろうろ歩きながらか?」
「まあ」
「溜息も吐いていた」
「……暑いんだ、分かるだろう?」
少々苦しい言い訳だな。キスリングはニコリともしない。
「如何して此処に?」
「警護の連中から
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