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緑の楽園
第五章
第51話 兵舎
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、心配そうにテーブルの下で俺の腿の上に手を置き、こちらを見上げていた。

「いえいえ! 元気ですよ。大丈夫です」
「そうか、どこか悪くなりそうには見えねえよな。よく見れば割としっかりした体してらあ。いっそこのまま兵士になったらどうだ?」

 兵士がそう言って笑うと、部屋にいた他の連中も一緒に笑った。
 どうも、この兵舎に泊まる兵士たちはフランクな性格の人が多いらしい。
 俺も頑張って笑った。
 いつも一緒にいるカイルにはごまかし切れていなかったと思うが、彼も空気を読んで笑ってくれた。

 ――頭をリセットしなければ。

 自分では切り替えたつもりだったが、まだ頭の中にあの領主が居着いていたようだ。
 少なくとも、この場では完全に消さなければならない。そうしないと普通の他愛ない会話でも事故を起こすことになるだろう。

 今ここにいるのはチャンスだと思えばいい。
 もし国王が今の俺の立場だったら――もちろんあり得ない仮定だが――この状況を、現場の兵士たちと直接触れ合える勉強の機会であると考えるはず。
 どうせ過ぎる時間は同じだ。それなら前向きに考えて過ごしたほうが有意義に決まっている。

 そもそも、最初から俺の感覚が甘っちょろすぎた可能性もある。
 俺は旅行でここに来ているわけではない。
 公用のために軍と一緒にここに来て、この城で泊まらせてもらう。そして宿舎は空いていた古い兵舎である――そこには何もおかしな点はない。
 ずっと首都の城で客室を使わせてもらっていたので、深層意識で勘違いをしていたのではないか。あれは当たり前のことではないはずだ。

 ――よし。

 俺は、右の手のひらで自分の側頭部を叩いた……ら。
 かなり大きな音が出てしまい、いきなりどうした的な顔で見られてしまった。
 心の中でやればよかった。



 ***



 その場に居た兵士たちとは、かなり長いこと話をした。
 普段の訓練のこと、遠征中の生活のこと、将軍たちの噂話など、いろいろなことを聞いた。

 その間、クロはあちこちの兵士から手招きされていたが、特に逆らうことなく、各テーブルを挨拶回りしていた。
 俺のペットであることは首都では浸透しつつあり、最近では霊獣様扱いされることが徐々に少なくなっている。
 それでも、兵士たちはありがたそうに頭を撫でていた。そして、クロもそれに応えるように頭を擦り寄せたり、手を舐めたりと、かなり愛想よく振る舞っていた。
 なんとなく、クロが俺のためにそうしてくれているような気がして、嬉しかった。

 食事は結局どうすればいいかの案内がなかったので、多目的室で兵士たちと一緒に食べさせてもらった。
 なぜか配膳に来たのがエドで、バッタリ会うかたちになって俺も彼も驚くこ
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