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銀河英雄伝説〜其処に有る危機編
第八話 士官学校校長って閑職だったよね?
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上座に向かって進むにつれて視線がきつくなる。ヒルデスハイム伯、シャイド男爵、コルプト子爵、シュタインフルト子爵、ラートブルフ男爵、カルナップ男爵、コルヴィッツ子爵……。こいつらフリードリヒ四世に相手にされていないんだろうな。挨拶しても碌に会話なんて無いんだろう。俺が呼ばれた事が面白くないんだ。

更に進むとフリードリヒ四世が居た。椅子に座っている。周囲にはリヒテンラーデ侯を筆頭に政府閣僚、軍幹部、大貴族が居た。ラインハルトも居たが俺を見ると不愉快そうに唇を歪めた。何で? 俺はお前の敵じゃないぞ。ポストだって閑職の士官学校の校長だ。そんなに嫌わなくても良いだろう。なんか最近不本意な事が多過ぎるな。

椅子の前に進み片膝を付いた。
「ヴァレンシュタインにございます」
「おお、来たか」
もう良い加減に酔っているのが分かった。もしかするとここにも酔ったまま来たのかもしれない。珍しい事じゃない。

「此度の捕虜交換、そちの献策だそうな」
「はっ」
「うむ、良くやった」
「畏れ入りまする」
視線が痛い。俺を睨んでいるのは誰だ?

「間接税の軽減もそちの献策だと国務尚書から聞いた。臣民は喜んでいるとな。これからも頼むぞ」
「はっ、微力を尽くしまする」
「うむ、下がって良いぞ」
「はっ」
良く分からん、何なんだ、これは?

フリードリヒ四世から解放され元の場所に戻ったがリューネブルクは居なかった。どうやら帰ったらしい。俺も帰るかと思っていると“エーリッヒ”と名前を呼ばれた。アントン・フェルナーとナイトハルト・ミュラーだった。二人とも笑顔だ。帰ろうとすると人が来る。

「来るなと言った筈だぞ、ナイトハルト」
「分かっているよ、だから俺一人だ。あくまで士官学校の同期生として来たんだ。そうだろう、アントン」
「ああ、エーリッヒは同期の出世頭だからな」
「私は士官学校の校長だよ。出世頭はナイトハルトだ。宇宙艦隊の正規艦隊司令官、前途洋洋だな」
二人が笑い出した。

「誰もそんな事は信じないぞ。今だって卿は皇帝陛下から直々に御言葉を賜ったんだ。誰が見ても卿は帝国の重要人物だよ」
「そうそう、ナイトハルトの言う通りだ。周りは卿の事を帝国軍三長官の懐刀だと言っている」
「それは事実じゃないね」
また二人が笑った。真実を教えてやりたいよ。俺は憐れな下僕だって。



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