アインクラッド 後編
還魂の喚び声 2
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キは飛び上がって天井を走った。するとたちまちマサキの両脚を地面から生えた鎖が絡め取り、マサキを逆さ吊りに捕らえてしまう。
「馬鹿が! 遂に頭が狂ったか!」
ジュンが目を血走らせ歓喜に打ち震えるが、これは半分ブラフだろう。既に《瞬風》のクールタイムは終わっているし、それは彼とて想定しているだろう。その上でこちらの作に乗り、転移後の攻防で勝負を決める算段か。だからこそ、ここでこいつはボロを出す――!
ジュンが得物を肩に担ぐようにして構えると、その周囲にバチバチと青白い火花が散り、稲妻を纏ったような轟音を響かせてカタナスキルではトップクラスの威力を誇る《霹靂神》がマサキの身体に迫る。マサキはそれを、避けることなく喰らった。
「そんなっ……本当に狂ったのか!?」
ジュンの叫び声と同時にマサキのHPが減少を始める。
この時マサキはジュンの硬直無視攻撃について、ソードスキル発動後一定時間以内に追加で入力を行うものだと見当をつけていた。マサキが回避した方向に空ぶることなく次のソードスキルを打ち込んできたことから、マサキの回避より後に二発目のソードスキルを入力したことは明らかだし、先ほど硬直したのはマサキがその場に留まり続け攻撃もしなかったために、カウンターの攻撃を入力できないまま制限時間が過ぎてしまったからだと考えれば矛盾がない。だからこそ、この一発目を受けたままにしてしまえば、普段どおりの技後硬直に襲われるはずだ。
しかし、そんなマサキの推測は意外なところから崩れ去った。順調に尽きつつあったマサキのHPが、二割台に突入したところで止まっていたのだ。
「馬鹿な……!?」
マサキの貧弱な防御力で重攻撃技などを受けてしまえば、一発でHPを全損してもおかしくはない。四割ほどのHPで耐えるなんてことはまず有り得ないのだ。
そしてもう一つ。上下逆に映るジュンの足が、強烈な違和感を伴ってマサキの脳に襲来した。《霹靂神》はその性質上、全体重を前に掛け、前側の足と後ろ側の足はほぼ一直線に並ぶ。しかしジュンの前側にある左足は、次に身体を回転させることを見越しているかのように一足分後ろ、かつ外側にあった。ソードスキルのシステムアシストに逆らった動きをした場合、そのソードスキルは不発となるが、今の《霹靂神》には不発に終わった形跡は無い。しかし、ジュンの左足の位置は明らかにアシストの許容範囲を超えている。
この二つの矛盾が、マサキを真の解へと導く鍵となった。
「回復!」
――そういうことか!
全てに合点がいったマサキは、瞬風でトラップを脱出すると同時に用意していた回復結晶でHPを回復し、またもジュンの正面から飛びかかる。
「ッ、こ、の――!」
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