アインクラッド 後編
還魂の喚び声 2
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背後で金属同士が触れ合う澄んだ音。《射て星》は出の速さと硬直時間の短さに優れた技ではあるが、今頃はまだ技が最後まで完成していないはずだ。にもかかわらずジュンが次の動作に移っていることを示す聴覚からの情報は、マサキの脳裏に得体の知れない不気味さを改めて浮き立たせる。
しかし、二回目の今回はそれを織り込んだ上で動いている。マサキは着地地点に先ほど投げた投剣が突き刺さっていることを確認すると、それを右足の中心で踏みつけ足場にし、鍛え上げた《軽業》スキルを総動員して振り向きざまに単発技《薫風》を発動、マサキを追いかけるように迸る大太刀の剣閃をなぞるように滑らせ攻撃を逸らす。
「な……っ!?」
二つの剣閃が照らすジュンの顔に、今日初めての驚愕が翻った。地面や壁、天井以外のものを足場にしている以上、トラップが起動することはない。そしてマサキの目の前に、涎が出るほど無防備なジュンの体が晒される。
しかし、今回の戦闘に限ってはその隙こそ最も警戒しなければならない瞬間である。ジュンの攻撃を完璧にいなしたように見えたマサキだったが、ソードスキルをぶつけ合った際、マサキの腕も予期していたより少し大きく弾かれてしまったため、ジュンに例の硬直無視攻撃を仕掛けられる前に離脱可能な攻撃タイミングを寸でのところで逃してしまっていた。マサキは早期決着のため攻撃を声高に主張する自分の声を必死に制し、もう一度回避に徹するべく彼の動きに集中する。
「……何?」
「……ッ!」
しかし、マサキが予想していたような攻撃は襲ってこなかった。図らずも睨み合いの形となるが、技後硬直が通常通りに解ける頃にジュンが慌てた様子で攻撃してきたため、マサキは飛びずさり同じく地面に刺さっていた別の短剣を足場に着地した。
今硬直を無視して攻撃してこなかったのは何故か。マサキはまずジュンが打った布石である可能性を考えた。今のことで「硬直無視を利用した攻撃は二回連続で使えない」という思考にマサキを誘導し、後に同じ状況を作り出した上で仕留めにくるというブラフだ。しかし、それにしてはジュンの焦りようは真に迫っていた。それさえも演技であった可能性も否定はできないが、ジュンにとってもマサキが短剣を足場に使ったことで近距離での睨み合いに発展する、などという展開は想定外だったはずで、一瞬でそこまで高度なブラフを思いつき即座に実行に移すとは考えにくいはず。となれば、素直にあの硬直無視攻撃には何らかの制約が存在すると考えるべきか。
しかし、悠長に敵を観察している暇はない。時間の経過は向こうを更に優位にするだけなのだから。
マサキはちらりと自分のHP残量を確認すると、ジュンに真正面から飛び掛った。《風刀》スキル単発重攻撃技《春嵐》。塚頭を右肩に付けるように構え突きを放つ寸前、マサ
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