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憎まれない敵
第四章

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「戦いの仕事はないである」
「やっぱりそうか」
「わかったいたであるか」
「だってあんた怪人でもな」
 それでもとだ、彼はホタルイカの丸茹でを一杯一杯箸に取って味噌に付けてから食べつつドカユキンに話した。
「憎めないんだよ」
「そうであるか」
「今だって僕と一緒に仲良く飲んでるだろ」
「友達だからであるが」
「いや、友達でもな」
 それでもというのだ。
「悪の怪人ならな」
「違うであるか」
「狂暴とか悪辣とか陰湿とか卑劣とかな」
 彼は人に嫌われ憎まれる要素を列挙していった。
「そうした要素が一切な」
「吾輩にはないであるか」
「正直憎めないんだよ」
 ドカユキンはそうだというのだ。
「だからな」
「吾輩は戦いを断られるであるか」
「あんたの野望は知ってるさ」
 彼にしてもだ。
「だったらその資金の調達はな」
「戦いでなく、であるか」
「もう今の仕事でな」 
 折角仕事が多いならというのだ。
「やっていったらいいであるか」
「吾輩のアイデンティティはどうなるであるか」
 怪人としてのそれはとだ、ドカユキンは彼に問い返した。
「それは」
「じゃああんた道で刃物振り回してる奴いたらどうする?」
「街の人達の安全の為に即座に取り押さえるである」
 これがドカユキンの返答だった。
「当然のことである」
「悪の怪人はそんなことしないからな」
「だからであるか」
「やっぱりあんた普通のゆるキャラになった方がいいかもな」
「ううむ、困ったである」
「仕事があって友達もあって生活も充実しているみたいだしいいんじゃないか?」
 彼は飲みつつドカユキンのコップに酒を入れた、ドカユキンお返しに彼のコップに酒を入れた。だがそれでも言うだった。
「吾輩の悩みは深刻である」
「そうか?旧式のOSよりましだろ」
 この問題の方が深刻だと返す彼だった、ドカユキンの悩みは尽きないが仕事は減っていないのは事実であった。


憎まれない敵   完


                    2018・10・25
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