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永遠の謎
299部分:第二十話 太陽に栄えあれその十一
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第二十話 太陽に栄えあれその十一

「素晴しい方だ」
「浮世離れされていますが」
「それでもなのですか」
「そうだ。あの方は資質にも恵まれている」
 そうだというのだ。それがバイエルン王だというのだ。
「王としてのな」
「正直そのことはです」
「意外でした」
 これが側近達の言葉だった。
「知的でありますし」
「しかも冷静です」
「私はわかっていた」
 ビスマルクはというのだ。やはり彼は慧眼の持ち主だ。
「そのことはな」
「閣下はですか」
「わかっておられたのですか」
「そうだ。あの方とは一度御会いした」
 それでわかったというのだ。王の資質にだ。
「その時にわかった」
「その時にですか」
「バイエルンに来られた時にですね」
「おわかりになられたのですか」
「そうだ、あの方はわかっておられるのだ」
 何がわかっているとかというとだった。そのことも話すのだった。
「ドイツのこともだ。政治のこともだ」
「そのあらゆることがですか」
「あの方はおわかりなのですか」
「その通りだ。確かに戦争は好まれない」
 それはだというのだ。戦争はだ。
「しかしそれがそのまま王の資質を失うかというとだ」
「そうではないのですね」
「戦いを好まないというのは」
「そういうことですね」
「そうだ。先のオーストリアとの戦争のことは覚えているな」
 話はそこに至った。あのプロイセンとオーストリアの戦争のことだ。
「あの戦争でバイエルンはオーストリアについた」
「はい、確かに」
「あの時は予想していました」
「むしろバイエルンはオーストリアにつくしかなかった」
 バイエルンの選択肢はそれしかなかった。政治の世界においては選択肢がごく限られている場合もあるのだ。それはその時もなのだった。
「それでつきましたが」
「しかしバイエルンは兵を動かさなかった」
「ほぼ中立の状態でした」
「そうしてバイエルンはプロイセンの恨みを買わなかった」
「我が国の」
「あそこでバイエルンが積極的に動けばだ」
 その場合はだというのだ。ビスマルクはその場合はどうしていたかも話す。
「プロイセンとしてもだ」
「断固たる処置を取らざるを得なかった」
「そうですね」
「そうだ。おそらく戦争は長引いた」
 八週間で終わった戦争は大方の予想では数年はかかるかと思われていた。しかしそれが八週間で終わったのはだ。どうしてかというのだ。
「バイエルンが動かなかったからだ」
「それでなのですね」
「あの戦争は早期に終わった」
「元々勝つにしても」
 それにしてもだというのだ。
「それでもですね」
「戦争は早期に終わった」
「損害も少なかったです」
「そしてオーストリアとは禍根を残さず講和ができました」

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