70話:葛藤
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フェザーン自治領 自治領主公邸
アドリアン・ルビンスキー
「代理とは言え、フェザーン自治領主の椅子の座り心地は如何かしら?最も、その椅子の価値はこの所、大暴落しているようだけど......」
「ドミニク、そんな言い方をしなくても、自治領主の座を私が勝ち取ったのではなく、投げ与えられたことも理解しているし、その椅子の価値が大暴落しているという事も理解している。だがな、大暴落しているからこそ、後は上がるだけとも考えられるし、旧世紀の亡霊から良くも悪くも解放された。つまりここからは俺の才覚次第という事だ。幸いにも帝国が優勢に戦争を進めたおかげで同盟にはかなりフェザーン資本が浸透できている。またやりようは十分にあるだろう?」
「止めたほうが良いのではないかしら?リューデリッツ伯とワレンコフ前自治領主のタッグと、経済面で争うなんて自殺行為。大人しく尻尾を振った方が良いのではなくて?少なくともリューデリッツ伯はあなたを評価している。積極的に忠誠心を、無いなりに示した方が得策なのではないのかしら?」
何かと目端の利く愛人の一人のドミニクを、秘書官にして数ヵ月、今の俺に、忌憚なく意見してくれる人材は自治領主府にはいないからこその任用だったが、フェザーンの建立に地球教の思惑があったと暴露されて以来、ドミニクは何かと挑発的な態度を取るようになった。夜の営みに不満があって挑発しているのかとも思ったがそうでもないらしい。
「あなたもリューデリッツ伯を知ってしまった以上、心の奥では分かっているはずよ?協力するにしろ、反抗するにしろ、彼に認めて欲しいだけだと。彼は歓楽街の生きる伝説だけど、それは金払いが良かったからじゃないわ。豪商達を相手に、惚れさせて骨抜きにしてきた女傑達を、軒並み生娘のように惚れさせてしまったから今でも語り継がれているの。
野心に満ち溢れた貴方でもそこまでは無理。私自身、年を偽って踊り子をしていたけど、あの方に『まだ、こんなところに出入りしてはいけないよ』と言われて。それなりのチップをスマートに渡された時に、精一杯尽くすから養ってもらえないかと小娘なりに思ったわ。ワレンコフの相手は出来ても、リューデリッツ伯の相手は貴方には無理よ」
「お前は分かっていてワザとそんなことを言っているのか?ドミニク。伯の周囲にはすでに人材がそろっている。おそらくワレンコフ氏も伯に仕えることになるだろう。忠実なしもべならボルテックで十分だ。伯からそれなりの立場をもらうためには、大功を上げるなり、敵として実力を示すなりしなければならん。どうせ働くならより大きな権限を任せてもらいたいからな」
「あら、気づいていないのかしら?あなたの魅力は溢れ出る野心だけど、それが出過ぎているのよ。伯の下で権限を任されるには『信頼』と『信用』の両方が必要。あなた
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