第五章
第50話 害虫
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ところに配置されていた。そして風呂や食事の案内まであったのだが……。
あの領主の態度から、やはり嫌がらせをされていると考えるのが自然だろう。
「……リク!」
この時代に来てからは、会う人はみんな俺に対して好意的に接してくれた。孤児院にいたときも、首都にいたときもそうだった。不思議に思うくらい、みんな親切で優しかった。
こんなことは初めてだ。
「リク!!」
左脇にドンという衝撃を受けた。
「うぇ!? あ、クロか。どうした?」
「何度も呼んでいたが……大丈夫か? 様子がおかしいが」
「ああ。まあ、大丈夫だよ」
そう言って仰向けになって目を閉じたが、クロが離れる足音が聞こえない。引き下がってはいないようだ。
いつもなら「そうか」などと言って、入口横に戻ってペタンなのだが……。
「さっきの人間は何を言っていたのだ」
「んー、いろいろと、だな。なんだか知らないけど、俺はずいぶんと嫌われてるみたいだ」
「何を言っていたのかと聞いている」
「……ずいぶん食いついてくるね」
あらためて横向きになる。
クロの顔を見たら意外とシリアスな顔だったので、少し驚いた。
「俺が最近のさばっていて、国王は俺みたいなわけわかんない人間に振り回されて大変だな……とか言っていたかな? どうも俺は害虫扱いされているみたいだ」
「……。私にも何か言っていたが。何と言っていた」
「えーっと、『従者を選べないのは不幸だったな、こんなくだらん人間に世話をされてるとはかわいそうに』だっけな? そんな感じのことを言ってたよ」
「従者……くだらん人間……誰のことだ」
「そりゃ俺のことでしょ」
「……」
うわ。凄い怖いんですけど。
「いちおう言っておくぞ。あの人は味方だからな。この国の人間だ」
「味方ならなぜそのような発言をする」
「んー。説明が難しいな。なんというか、人間って、味方なら敵でないとは限らないというか……」
「意味がわからない」
「そうだよな。俺もわからない」
「……」
「でもさ。よく考えたら、俺は特に能があるわけでもないのに国王に気に入られて近くにいるからさ。嫌われやすい存在ではあるんだろうな。逆に、今まで堂々と嫌ってくる人がいなかったというのが奇跡だったのかもしれないぞ」
「人間はよくわからない」
「そうだよな。俺もよくわからない」
「お前はさっきもわからないと言っていた」
「ああ。本当にわからないからな……」
そこでクロが、突然入口のほうを向いた。
それに遅れて足音が聞こえてくる。クロが特に慌てていないので、俺の知っている誰かということになる。
「いた! 兄ちゃん探したよ」
「カイルか。どうした?」
やってきたのは金髪少年だっ
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