第五章
第50話 害虫
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民間人なので遠慮しておいたほうがよいと思い、道中の城では必ずそうしていた。
先頭の国王が領主に挨拶をすると、領主オドネルはオーバーな仕草で歓迎の辞を述べていた。国王は馬から降り、案内を受けて先に進んでいく。
そして次は神とジメイのペアが馬から降り、挨拶をして進んでいった。参謀や他の側近たちも続いて中に入っていく。彼はそれぞれに笑顔で挨拶を返していった。
ところが、最後に俺が挨拶をすると、彼の顔からその笑みが消えた。
「ほう。最近陛下に取り入ったという自称古代人のオオモリ某とは、お前のことか」
一瞬、何が起きているのかわからなかった。
固まってしまった。
その表情に侮蔑の感情が込められていると気づくのにも、数秒を要した。
「お前のような海の物とも山の物ともつかない者に振り回されて、陛下も気の毒なことだ」
そう言うと、彼は俺の後ろに視線を送る。
「噂に聞く霊獣そっくりの白い犬か。従者を選べないのは不幸だったな。こんなくだらん人間に世話をされているとはな……かわいそうに」
クロは差し尾を硬く挙げて、領主をじっと見ていた。
***
正直なところ、かなり動揺してしまっていた。
この国の要人にあからさまな敵意を向けられたのは、初めてだったからだ。
門をくぐってからその先は、放心状態に近かったのでよく覚えていない。案内役の兵士に言われるがままに動いていたとは思うが……。
カイルが門のところで何やら言っていたような? なぜ俺が他のメンバーとは別のところに案内されるのかと、城の兵士に抗議していたような気もする。記憶がいまいち曖昧だ。
気づいたら、兵舎の中の、ベッドしか置けないような狭い箱部屋で立っていた。
視界がぼんやり暗く、頭は重くて垂れてきそうな気がする。手足が少し痺れている。
この兵舎は二階建てで、今俺がいる二階部分は、狭い個室が通路を挟んで左右に並んでいるようなつくりだが、非常に古い建物に感じる。掃除が行き届いているようでもなく、吸い込む空気は埃っぽい。
この部屋は二階だが、歩くとミシミシ鳴り、床が抜けて一階に落ちるのではないかと不安になるくらいの廃墟感である。
城の建物からも少し距離があると思う。明らかに他のメンバーから引き離された格好だ。
踏ん張りが利かなくなってきたので、ベッドに横になった。
「……リク」
案内してくれた兵士からは、「明日の打ち合わせの時間までには来るように」と、突き放すような態度で言われた記憶がぼんやりとある。それ以外はおそらく何も聞いていない。食事もどうすればよいのかわからない。
今まで宿泊した城では、俺が泊まっていたところはすべて城の中の部屋で、国王の側近らからも近い
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