294部分:第二十話 太陽に栄えあれその六
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第二十話 太陽に栄えあれその六
「かつては神の飲み物とされてきましたが」
「ギリシア神話においてでしたね」
「はい、そうです」
王はギリシアも愛していた。欧州の美の原点の一つであるその美をだ。
「あの中では誰もが葡萄の美酒を愛していますね」
「そしてローマでも」
「愛されるべくして愛されていたのです」
ワインはだ。そうだというのだ。
「それがワインなのです」
「では。今からそのワインを」
「楽しませてもらいます」
「チーズもあります」
大公は酒の友にそれもあるというのだ。
「それもまた」
「チーズもですか」
「山羊のチーズですが如何でしょうか」
「それはいい」
山羊のものと聞いてだ。王はだ。
微笑みをさらに深くさせてだ。そうして話すのだった。
「あの濃厚な味を楽しめますか」
「はい、是非そうされて下さい」
「喜んで。そうさせてもらいます」
「では」
こうしてだ。王はワインを楽しむことになった。無論音楽もである。ピアノでワーグナーの音楽が奏でられる。王はその音楽をだった。
屋敷のソファーに座ってだ。ワインを楽しみながらその音楽を聴く。その中でだ。
ふとだ。大公が言うのだった。
「あの、陛下」
「何でしょうか」
音楽はローエングリンの聖堂への合唱だった。それをピアノで奏でているのだ。その清らかな音楽の中でだ。大公は言ってきたのである。
「実はです」
「実は?」
「お客様が来ているのですが」
「私以外にですか」
「明日に呼んだつもりでした」
しかしだというのだ。この言葉は実は偽りである。
「ですが。そうではなくです」
「今日来られたのですね、その方は」
「私が招待状に間違って今日と書いてしまったのです」
自分のミスだというのである。
「そのせいで鉢合わせになってしまいました」
「構いません」
美酒とワーグナーに満足している王はだ。機嫌よく答えた。
「それではその方をです」
「はい、その方を」
「こちらに案内して下さい」
そうしろというのだった。やはり上機嫌にだ。
「是非共」
「そうしていいのですね」
「その方もワインを飲まれますね」
「ワイン以上にです」
「それ以上に?」
「音楽を愛されています」
こう話すのだった。その客人は音楽だとだ。
「そちらになります」
「音楽ですか」
「ワーグナーをです」
そのだ。ワーグナーと聞いてだった。
王の目が動いた。そうして話すのだった。
「ワーグナーを愛しています」
「そうなのですか」
その客人がワーグナーを愛していると聞いてだ。王はだ。
目の光を変えた。青い目の輝きを強くさせてだった。
そのうえで。こう言うのだった。
「その方もですか」
「ではその方
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