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永遠の謎
293部分:第二十話 太陽に栄えあれその五
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第二十話 太陽に栄えあれその五

 こんなことを言うのだった。
「一度陛下と彼女をだ」
「御会いして頂く」
「そうされますか」
「御二人を」
「まず。ワーグナー氏と離れた陛下の御心が安らかになる」
 王のことをだ。どうしても忘れない大公だった。それは叔父としてだ。甥を気遣いそのうえでだった。彼は大公に話すのだった。
「そしてゾフィーもだ」
「あの方も」
「それは一体」
「あの娘は陛下に好意を持っている」
 大公が今言うのはこのことだった。
「陛下は。女性が見るととりわけ魅力的なようだ」
「あれだけの容姿ですし」
「それに御心も高貴ですし」
「それならですね」
「女性が惹かれない筈がありません」
「しかもだ。女性に対して清潔に見える」
 無関心であることがだ。そう見えるのだ。王の同性愛の嗜好はよく知られている。だがそれでもだ。王の女性への無関心はそう思われるものだったのだ。
 その容姿に高貴な立場と性格、それに女性への無欲さ、そうしたこと全てがだ。女性が王を愛することになっているのだ。王はとりわけ女性に愛される人物だった。
 しかしその王は女性を愛さない。しかしそれをだとだ。大公は言うのだった。
「それを何とかする好機でもあるな」
「それではですね」
「御二人を何処かで」
「それに相応しい場所で」
「それは容易い」
 大公はそれでいいというのだ。
「陛下とゾフィーを会わせるのはな」
「そういえば御二人もですね」
「幼い頃よりですね」
「御知り合いでしたね」
「そうでしたね」
「だから容易いのだ」
 こう話す大公だった。
「最初から知り合いであるならな」
「はい、それではです」
「公爵が御二人をですね」
「それに相応しい場所で」
「御互いに」
「そうさせてもらおう」
 穏やかな笑顔になってだ。周りに話す大公だった。そうしてだった。
 ある日王は舞台を観ていた。この日はシラーの劇だった。それを観た帰りにだ。
 大公がだ。こう王に声をかけたのである。
「陛下、宜しいでしょうか」
「叔父上、どうされたのですか?」
「美酒を手に入れまして」
 ワインがだ。あるというのである。
「それを如何でしょうか」
「ワインですか」
「はい、それで陛下を私の屋敷に御誘いしたいのですが」
「叔父上の御誘いならです」
 王は微笑になって大公の言葉に応えた。
「受けない訳にはいきませんね」
「そう言って頂けますか」
「そうさせてもらいます」
 微笑一つも気品がある。その気品を漂わせての言葉だった。
「是非共」
「わかりました。それでは」
「ワインはいいものですね」
 王は微笑みながら述べる。
「憂いを忘れさせてくれます」
「味はどうでしょうか」
「好きです」

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