逡巡
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日まで自らが操っていた艦隊への懐かしみ――そして、わずかな嫌悪がある。
「カイザーリンク大将?」
再び問うた通信士官の言葉に、カイザーリンクは動いた。
「接舷許可を。私は出迎えに向かう」
「……は! 接舷許可……宇宙港第三番ゲートを開く、順次接舷をせよ」
通信士官が、艦隊へと接舷の案内を伝える。
そんな様子を横目に、カイザーリンクは伝えられたイゼルローン第三港へと向かった。
指令室から外壁部へは数キロ以上の距離だ。
単純に歩けば二時間以上はかかるだろう。
迷路のような――防衛を考えて作られた――通路を通り、カイザーリンクは要塞内のモノレールに乗って、第三港へと向かった。
足取りはひどく思い。
だが、周囲の副官たちは重い足取りを老いによりものだと勘違いしてくれているようだ。
カイザーリンクの足取りに合わせるように、ゆっくりと進んだ。
だが、どれだけゆるりと歩いていたとしても、いずれは到着する。
艦隊の第三港への接舷とほぼ同時。
カイザーリンクは第三港へと到着した。
自動扉が開けば、数千隻の艦艇が並んでいた。
一艦隊の総数はおおよそ一万隻。
残る艦艇は別の港へと向かったのだろう――見慣れた艦艇の中で、カイザーリンクが初めて見る漆黒の旗艦があった。
ネルトリンゲン。
通常の戦艦よりも艦艇も砲門も巨大な――まるで巨人のようだ。
ゆっくりと巨人へと近づけば、ちょうどネルトリンゲンの搭乗口が開くところであった。
姿を現すのは、白髪の老人。
カイザーリンクとは違い老いてなお無骨な様子は、軍人に相応しい。
搭乗口から歩けば、途中でカイザーリンクに気づいたようだ。
立ち止まり見事な敬礼をされれば、カイザーリンクも黙って答礼をする。
ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ。
カイザーリンクの後に、艦隊指揮艦へと収まった老将に、カイザーリンクは苦悩を含んだ表情で彼に視線を送った。
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