暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
逡巡
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
あれば我々はフェアリーにさらに食い込める」

 違うかと言葉に、秘書はしばらく沈黙。
 やがて、頷いた。
「そうであれば、その後など問題にならない。相手にもそう伝えておけ――我々が全力でバックアップをすると」
「……かしこまりました。ですが、暗部の周辺は」

「放っておけ。今回は動くのは帝国と同盟だ。我々はその道筋を作るに過ぎない。今更暗部の周辺を嗅ぎまわったとしても、意味が無い。奴らにはしかる後、撤退するように」
「その前に逮捕された場合は」
「そんな間抜けには用はない。躊躇した場合に、確実に殺せるように手配をしておけば、問題はない」
 そう告げて、ウェインは唇をわずかに曲げた。

「……」
 そんな様子に、秘書が沈黙で答える。
 そんな様子に、ウェインは笑い声をあげた。
「不満そうだな」
「いえ」

「顔に出ているぞ。確かに本来の計画とは違う。だが、結局のところ結果はかわらない。少し……面倒な程度だ」
 肩をすくめ、ウェインが合わせていた手を離して、机に置いた。
 小さく指を叩く。
「それに。今更計画の中止はできない」
 机に置いた指が、リズムを刻む。

 こつこつと小さく音を立てていた。
「既に荷物はイゼルローンに到着し、同盟も荷物の受け取りを待っている状態だ。そんな中で中止にすれば、次に協力してくれなくなる可能性もある」
 だから。
「続行だ」

「ですが。今回から帝国は新しい人物――それも随分と厳しいとお聞きしますが」
「続行だ」
「かしこまりました。『アメリカ』にはそう伝えておきます」
「ああ。取引が終わったらすぐに逃げていいと伝えておけ――長い間準備したが、さすがにロイ・オースティンはもう使えないだろうからな」

「はい。確かにお伝えします」
 頷いて、秘書が歩き去る。
 扉を閉める音がして、しばらく。
 だんと――力強く机を叩く音がした。

 ウェインだ。
 握りしめた拳を机上に置いたままで、ウェインは歯を噛み締めていた。

 + + + 

 イゼルローン要塞。
 そこにゆっくりと近づく艦隊があった。
 わずか数か月前までにはカイザーリンク艦隊と呼ばれていた一艦隊だ。
 それは予定通り、イゼルローン回廊同盟側の星域への調査へと向かっている。
 第五次イゼルローン防衛戦後の同盟軍の様子を見るための、威力偵察任務だ。

 最も、カイザーリンク大将がイゼルローン駐留司令官へと変わったことにより、既にカイザーリンク艦隊という名称はなくなっている。
「司令官。艦隊が接舷許可を求めております」
「……」
 ゆっくりと近づいてくる艦隊をモニターに映し出していた通信士官が、返答を求める。

 だが、司令官席に座る老将は黙っている。
 それはつい先
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ