逡巡
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あれば我々はフェアリーにさらに食い込める」
違うかと言葉に、秘書はしばらく沈黙。
やがて、頷いた。
「そうであれば、その後など問題にならない。相手にもそう伝えておけ――我々が全力でバックアップをすると」
「……かしこまりました。ですが、暗部の周辺は」
「放っておけ。今回は動くのは帝国と同盟だ。我々はその道筋を作るに過ぎない。今更暗部の周辺を嗅ぎまわったとしても、意味が無い。奴らにはしかる後、撤退するように」
「その前に逮捕された場合は」
「そんな間抜けには用はない。躊躇した場合に、確実に殺せるように手配をしておけば、問題はない」
そう告げて、ウェインは唇をわずかに曲げた。
「……」
そんな様子に、秘書が沈黙で答える。
そんな様子に、ウェインは笑い声をあげた。
「不満そうだな」
「いえ」
「顔に出ているぞ。確かに本来の計画とは違う。だが、結局のところ結果はかわらない。少し……面倒な程度だ」
肩をすくめ、ウェインが合わせていた手を離して、机に置いた。
小さく指を叩く。
「それに。今更計画の中止はできない」
机に置いた指が、リズムを刻む。
こつこつと小さく音を立てていた。
「既に荷物はイゼルローンに到着し、同盟も荷物の受け取りを待っている状態だ。そんな中で中止にすれば、次に協力してくれなくなる可能性もある」
だから。
「続行だ」
「ですが。今回から帝国は新しい人物――それも随分と厳しいとお聞きしますが」
「続行だ」
「かしこまりました。『アメリカ』にはそう伝えておきます」
「ああ。取引が終わったらすぐに逃げていいと伝えておけ――長い間準備したが、さすがにロイ・オースティンはもう使えないだろうからな」
「はい。確かにお伝えします」
頷いて、秘書が歩き去る。
扉を閉める音がして、しばらく。
だんと――力強く机を叩く音がした。
ウェインだ。
握りしめた拳を机上に置いたままで、ウェインは歯を噛み締めていた。
+ + +
イゼルローン要塞。
そこにゆっくりと近づく艦隊があった。
わずか数か月前までにはカイザーリンク艦隊と呼ばれていた一艦隊だ。
それは予定通り、イゼルローン回廊同盟側の星域への調査へと向かっている。
第五次イゼルローン防衛戦後の同盟軍の様子を見るための、威力偵察任務だ。
最も、カイザーリンク大将がイゼルローン駐留司令官へと変わったことにより、既にカイザーリンク艦隊という名称はなくなっている。
「司令官。艦隊が接舷許可を求めております」
「……」
ゆっくりと近づいてくる艦隊をモニターに映し出していた通信士官が、返答を求める。
だが、司令官席に座る老将は黙っている。
それはつい先
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