逡巡
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例に違反している。逮捕しても十二分に有罪の証拠はそろっている。
だが。
「捕まえたところで、トカゲの尻尾が切られるだけだろう」
「理由はわかるかもしれません」
「……いや」
しばらく考えて、アロンソは否定を口にした。
その様子に、バグダッシュは理由を求めるようにアロンソを見つめた。
「手口を見れば――おそらくは、プロだ。行動を起こせば、こいつは死を選ぶ」
「そして、真実は闇の中ですか。ですが、行動させるよりは良いのでは」
「今回を止めたところで、何も終わらんよ。おそらく次の手を打ってくるだろう――そして、その次の手を我々は理解できるか?」
尋ねた言葉に、バグダッシュはもちろんと答えることはできなかった。
一度見逃している前科がある。
そして、それはこれだけではないかもしれない。
ロイ・オースティンと同様に、偽物に入れ替わっている人物がいるかもしれないのだ。
「彼が何をしているか――知る必要がある」
「ですが。それはフェアリーを危険にさらすのではないですか」
「危険か」
呟いて、アロンソは小さく天を見た。
考えるような仕草に、バグダッシュは黙って、アロンソを見る。
感情のともらぬ表情に、わずかに動くのは戸惑いか。
「構わない。それよりも――大切なものがある。だが、できるなら」
言いかけた言葉をやめて、アロンソの瞳は、バグダッシュへ。
「頼めるか」
その強い言葉に、バグダッシュは敬礼で答えた。
「任されました」
+ + +
報告書に、ラリー・ウェインは小さく目を開いた。
それを運んだ女性秘書は、ただ黙ってウェインの様子を見ている。
わずか一枚程度の報告書。
それに十分ほどの時間をかけて、ウェインは静かに机の上に置いた。
「なるほど。少し面倒なことになっているようだね」
「少しではないと思います」
「少しだ」
秘書の言葉を言いなおすように、ウェインは告げた。
わずかに怒りを含んだ言葉。
だが、女性秘書は冷静に書類に書かれた事実を告げる。
「本来ならば会議で決定しているはずの、輸送契約が保留になりました。さらには暗部の事務所周辺で軍人の姿が目撃されています。計画を延期することも考慮に……」
「続行だ」
言葉の途中で、ウェインの強い言葉が遮った。
手のひらを合わせて、ウェインが言葉を続ける。
「輸送契約が保留になった。それは――フェアリーとしての話だ。何のために金を渡していると思っている。大型輸送船三隻程度、黙って動かすことはわけがない。違うか」
「……それは可能かと思われます。ですが、その後」
「その後があると思っているのか。実際にフェアリー社が輸送をしたという事実が大切なのだ。そして、その事実が
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