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永遠の謎
292部分:第二十話 太陽に栄えあれその四

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第二十話 太陽に栄えあれその四

「どちらにしろだ。そうした女性しかだ」
「陛下は目を向けられない」
「そうなのですか」
「実際にいればな」
 大公は目を少し伏せて述べた。
「いいのだが」
「そうした方がですか」
「おられれば」
「そうだ。いいのだが」
 大公は憂いの言葉を出した。
「どなたかな」
「誰かおられればいいのですが」
「確かに」
「どなたかが」
「探すか」
 こんなことも言う大公だった。
「それではな」
「いえ、探してもです」
「陛下が振り向かれる女性とは」
「その方が果たしておられるか」
「それも問題ですし」
「一人だけか」
 大公は言った。
「あの方と心を通わせられた女性は」
「エリザベート様ですね」
 それが誰かはだ。ここにいる彼等はすぐにわかった。
 今はオーストリア皇后となっている彼女だ。彼女しかなかった。
 その彼女のことを言うとだ。彼等はだ。
 ふとだ。こんなことを話すのだった。
「そういえばエリザベート様には多くの妹君がおられます」
「その妹君の方々も婚姻が決まっていっていますが」
「まだ。末のゾフィー様はまだです」
「御相手が決まっていません」
「そうだったな」 
 大公もそのことに気付いた。彼女のことにだ。
 そしてだ。気付いた顔になってだ。こう側近達に話すのだった。
「ゾフィーがいたのだ」
「はい、あの方がです」
「あの方がおられます」
「エリザベート様の妹であられるなら」
「若しや」
「しかもだ」
 ここでだ。大公はまた言った。
「彼女については私もよく知っている」
「それも幼い頃よりですね」
「その頃から」
「いい娘だ」
 大公は微笑んで話す。よい娘だとだ。
 そしてだ。さらにこうも話すのだった。
「心が奇麗だ」
「そうですね。純粋で」
「芸術も愛されます」
「とても素晴しい方です」
「しかもそれだけではない」
 大公はさらに話した。彼女のことをだ。
「あの娘は陛下と同じ趣味を持っておられる」
「ワーグナー氏の音楽をですか」
「あの御仁の音楽を」
「ワーグナーは主に男が好むものだと思っていた」
 これは大公の主観である。しかしだった。
 ゾフィーはそれでもだった。ワーグナーを好んでいた。ワーグナーを愛するのは男だけではない。女性もなのだ。彼の芸術を愛するのだ。
 それを話してだ。大公はだ。
 考える顔になってだ。こんなことを話した。
「しかしそれはかえっていいことだ」
「陛下のお相手にですね」
「いいことですね」
「それでは」
「そうだ。それではだ」
 大公は王と彼女のことを併せて考えてだ。そしてだ。

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