第6章:束の間の期間
第178話「魅了の傷跡」
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うしはったん?」
「い、いえ、ちょっと手を滑らしただけよ……。戦い疲れで気が抜けてたみたい」
咄嗟に誤魔化してコップを拾う鈴。
しかし、内心は動揺しまくっていた。
「(……そう。そうよね……むしろ、あの二人の犠牲だけで済んだ方が奇跡に近いのよね……。妖の勢力に対し、私たちの戦力は少なすぎた……その結果が、二人の死……)」
鈴にとって、椿と葵は前世で自分を解放してくれた恩人の一人だ。
その恩人が死んだのであれば、ショックが大きいのも当然だった。
「それにしても……そうかぁ……あの二人が……」
「詳しい事は聞いてないんだけどね……司さんと奏ならわかるかも」
「………」
一気に暗い雰囲気になる。
魅了に関してはどちらかと言えば困惑した雰囲気だったが、こちらは知っている人……それも親しい人が死んでしまったため、ショックも大きい。
「……優輝さんが姿を見せないのも、それが関係してるんか?」
「……そうね。椿さんと葵さんは、優輝さんにとって精神的支柱だったらしいわ。だから、いなくなって限界を迎えて……」
「……今は、倒れて安静にしているみたいなの」
「そう、なんか……」
いつも弱い所を見せる事のなかった優輝。
それは魅了をされていた事を踏まえてもはやては覚えていた。
そのため、倒れる程ショックだった事が良く理解できた。
「っ……!」
暗い雰囲気になり、会話が途切れる。
その空気を断つためか、アリサが気を切り替えるように両頬を叩く。
「いつまでも暗くなってられないわ!あの二人ならこんなの望んでいないはずよ!」
「……そうだね。椿さんと葵さんなら、そんなの望まないよね……!」
アリサの言葉に、すずかがそう返す。
未だにショックは消えないものの、二人は気持ちを切り替えて立ち直った。
「……強いなぁ、二人とも。ショックな事でもすぐ立ち直るなんてなぁ」
「はやてだって、魅了の事で混乱してたはずなのにもう落ち着いてるじゃない。同じよ。……落ち込んでいる暇があったら、出来る事をやればいいのよ」
「出来る事……そうだね。そうだよ……うん……!」
はやてが感心し、続けてなのはがアリサの言葉につられて自分を奮い立たせる。
いつまでもショックで立ち止まってる場合ではないと、そう言わんばかりに。
「皆、凄いね……私は……」
「……フェイトちゃん」
しかし、フェイトだけはまだ立ち直れていなかった。
ずっと頼りにしていた人物が、自分の心を歪めていた事がショックだったのだ。
「今までの私は、偽りだった……。ずっと、本当の自分じゃなかった……」
「フェイト……」
「フェイトちゃん……」
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