第6章:束の間の期間
第178話「魅了の傷跡」
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…」
「……司、少し休んだ方が……」
「うん……ちょっと、そうさせてもらうよ……」
何とか先走った人達を止め、私は息を切らしてその場に座り込む。
魔力も霊力もほとんどないから、疲労が大きくなっていたみたいだ。
「……なんで……止めんだよ……!」
「ヴィータちゃん……」
バインドできっちり止められたヴィータちゃんが、絞り出すようにそう言う。
「全部あいつのせいで!人の心を弄んだんだぞ!?なんで止めるんだよ!!」
ヴィータちゃんの怒りは尤もだ。
私だって、同じ立場であれば自分の状態も顧みずに報復に向かおうとしただろう。
そして、そう言った想いにより共感できるのはアリシアちゃん達だ。
「だからって、そのまま皆を放置したら殺す勢いで報復するでしょ?それはダメだよ」
より共感できるからこそ、アリシアちゃん達は皆を止めて説得していた。
この場において、私はあまり出番がないだろう。
同じく、鈴さんも。魅了をされた事がない私たちでは、皆を止める事は出来ない。
「それに、神夜に直接報復した所で、何も変わらないわ。精々憂さ晴らしになるだけ。……根本的な部分の解決にはならないわ」
奏ちゃんがアリシアちゃんの言葉に続けて言う。
……少し心配だったけど、皆を止めている内に落ち着きを取り戻したみたいだ。
「……根本的な、部分……?」
「何となく察してる人もいると思うけど、神夜の魅了は無自覚なものよ。本人すら掛けている事に気付かないわ。……周りの人は気づいていたようだけど」
話の流れからして、神夜君の背後に存在する黒幕の事も話すみたいだ。
まだ私たちも推測しかできないから、“いる”って事だけしか言えないけど。
「……無自覚だったら、許されるのかよ……!」
「ううん。そうは言わないよ」
その言葉を別方向で捉えたのか、怒りを込めて絞り出すようにヴィータちゃんは言う。
でも、それは違う。怒りを感じるのは当然だけど、そういう問題じゃない。
「言ったよね?“無自覚な魅了”だって。本人すら、魅了の力を持っている事を知らなかった。……もちろん、生まれながらにしてそんな力が存在する訳がない」
「そうなの?レアスキルの可能性は……」
「それこそあり得ないよ。夜天の書の守護すら貫通する魅了なんて、それこそロストロギア級の力。……特異体質で済ませられるものじゃないよ」
転生特典を知らない人からすれば、レアスキルと思うのも仕方がない。
でも、その効果が働く力が強すぎる。
はやてちゃんは夜天の書による力で精神的な部分においても守護されている。
言ってしまえば生半可な力では干渉できないのだ。
なのに、魅了はそれを貫通した。
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