第五章
第49.5話 道中
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交渉がまとまれば破ったことにはならないですし。まずは話し合いを頑張りましょう」
「……ああ、そうだな。頑張ろう」
交渉にあたる予定のメンバーには、俺も入っている。
地下都市側から見れば、俺だけが人間の定義にあてはまっているため、交渉団に入らざるを得ない。他の人間に対しては、きっと一段下に見てくるのだろうから。
参謀や将軍からは、「お前がキーマンになるだろう。頑張ってくれ」と言われている。
「まあ、お前も余との約束を過去に破っているのだから、万一余が破るようなことになっても怒らないでもらえると嬉しい」
「え? 俺、約束破りましたっけ?」
「やはり忘れていたのか……どうりでいつまでも果たされなかったわけだ」
国王と約束をしたのに履行していない。そんなことがあっただろうか?
そんなことは……。
……あ。
あったかもしれない。
思い出してしまった。
砦の戦いのとき、無事に帰ってきたらまた肩車を、というようなことを国王から言われた気がする。
「すみません思い出しました。肩車の件ですよね。すっかり忘れてました」
「フン。もういい」
国王は首を振って進行方向を向いた。
「そんな子供みたいな拗ね方されましても」
「余は子供だ。十二歳だぞ」
「都合のいいときだけ子供であることをアピールしないでください……」
手枷を付けたまま前を歩いていたタケルが、振り返って微笑みながら「仲いいですね」と言う。少し違うと思う。
国王が拗ねたままなので、俺は一つ提案をすることにした。
「じゃあ今夜やりに行きますから。それで勘弁してください」
「……忘れるなよ」
今夜については、まもなく到着する城で宿泊することになっている。
道中七か所を予定している宿泊場所のうち、一つ目ということになる。
あまり大きな城ではないそうだが、城の敷地内の兵舎のほか、城下町の施設などもフル稼働で使い、それでも足りない分は仮設テントを用意してもらうとのこと。
***
城下町は、大きく空堀と塁で囲まれていた。
町の重要な施設や、重要な農地はすべてその内側に入れられている。
以前に小田原城に行ったことがあったので覚えていたが、町ごと囲ってしまう「総構え」というものだと思う。
俺のいた時代と違い、町から外れれば、もうそこは普通の人間の世界ではない。猛獣や野犬、野盗などから町を守らなければならないのだ。
総構えの門の近くまでやって来ると、領主が部下と思しき人間たちを連れて、門の前まで迎えに来ていた。
領主は、腰の低い壮年の男性だった。
「ようこそお出で下さいました、国王陛下。我々一同、陛下と軍の皆様を歓迎いたします」
「わざわざの出迎えご
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