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永遠の謎
29部分:第二話 貴き殿堂よその七
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第二話 貴き殿堂よその七

「その音楽はフランスのそれを超える」
「フランスを」
「オーストリアもだ」
 目下の最大の敵であった。大ドイツ主義を掲げるその国こそが小ドイツ主義、即ちオーストリアを排したドイツを掲げるプロイセンの敵なのだ。
 それでだ。彼はここでオーストリアの名前を出したのだ。
「あの国の音楽もだ」
「ワーグナーはそれだけのものがある」
「その通りだ。確かにあの男は危険な思想の持ち主だ」
 その急進的な思想はビスマルクから見てもそうだった。
「だが。その音楽はだ」
「ドイツの象徴となる」
「あの方はそれがわかっておられる」
 またバイエルンの太子の話になった。
「それだけの方だ」
「左様ですか」
「そうだ。あの方は様々な素晴しいものを持っておられる」
「資質も。既に出されているものも」
「そうだ。そして」
「そして?」
「魅力的な方だ」
 このことも話すのだった。魅力のこともだ。
「類稀なる魅力の持ち主であられる」
「カリスマですか」
「そうだ。そのカリスマもまた素晴しい方だ」
 こう話していく。
「非常にな」
「ではその方は」
「必ず素晴しいことを残される」
 また太子を高く評価するのだった。
「後世に残るまでな」
「では御主人様は太子を」
「好きになった」
 素直な、だ。感情だった。
「これからも会えるかどうかはわからないがだ」
「それでもですね」
「見守りたい。そして私のできることをさせてもらいたい」
「ドイツの為に」
「あの方の為にもな」
「バイエルンの太子の為に」
「プロイセンにいようともだ」
 それでもだというのである。
「私はあの方をだ」
「見守り、そしてお力を」
「そうしたい。ただ」
「ただ?」
「気の毒な方でもあられる」
 ビスマルクはここで顔を曇らせた。そうしてこんなことも言ったのである。
「非常にな」
「それは何故ですか?」
「孤独な方だ」
 太子をしてだ。こう言うのであった。
「非常にな」
「孤独な、ですか」
「君主は本質的に孤独なものだ」
 それは至高の座にあるからだ。至高の座に座る者は一人しかいない。太陽が一つしかないのと同じである。これは言うまでもなかった。
 しかしだった。ビスマルクの今の言葉は君主だからこそ孤独であるという他にもだった。こうした意味もその中にあったのである。
「あの方をわかることができる者は少ない」
「少ないですか」
「今の世には非常に少ない」
「今は」
「あの方は後世になってからわかる方だ」
「歴史ですか」
「賢者は歴史に学ぶ」
 彼のだ。座右の銘であった。
「愚者は経験に学ぶ」
「では太子は」
「歴史において理解される方だ」
「今ではなくですか」

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