289部分:第二十話 太陽に栄えあれその一
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第二十話 太陽に栄えあれその一
第二十話 太陽に栄えあれ
王はだ。ミュンヘンに戻すとだ。
すぐに周囲にこんなことを話すのだった。
「王としての務めの一つを果たす時が来た」
「王としての」
「といいますと」
「伴侶のことだ」
それだとだ。周囲に話すのである。
「その女性を迎える時が来たのだ」
「といいますと」
「遂にですか」
「御后様をですか」
「迎えられるのですか」
「そうだ。私が一人でいてはだ」
王としての言葉だ。しかしだ。
それは淡々としていた。感情が見られない。その淡々として事務的とさえ思える言葉でだ。王は周囲に対して話していくのだった。
「不都合だな」
「はい、御言葉ですが」
「それはやはりです」
「よくありません」
周囲もこう王に話していく。
「ですからできるならです」
「一刻も早く御后をです」
「御迎え下さい」
「そしてです」
周囲の王への言葉が変わった。
「どなたでしょうか」
「確かに。迎えられることはいいことです」
「しかしです。ただ迎えられるのではなくです」
「どなたでしょうか」
次の問題はだ。そのことだった。
「バイエルン王に相応しい方」
「その方を迎えなくてはなりませんが」
「それは一体」
「どなたでしょうか」
「既に決めてある」
王は周囲に対してすぐに答えた。
「その相手はだ」
「もうですか」
「決められているのですか」
「そうだったのですか」
「そうだ。彼女はだ」
誰なのか。王は周囲にその意中の相手について話すのだった。
話は遡る。ワーグナーがスイスに追放された時だ。
王は孤独を感じていた。そのうえで側近達に話していた。
「悲しいものだな」
「ですが陛下、それはです」
「もう決まったことです」
「ですから。もうです」
「忘れられることです」
「忘却か」
王は彼等が差し出す処方薬を見た。
「それか」
「はい、それもまた必要です」
「ですからここはです」
「お忘れ下さい」
「そして別の楽しみを」
「そうするしかないのか」
王は寂しい瞳になり玉座で言葉を出した。
「今の私は」
「ワーグナー氏はスイスにおられます」
「バイエルンにはもうおられません」
「ですから」
「手放さざるを得なかった」
王はその今のことをだ。こう表現したのだった。
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