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永遠の謎
287部分:第十九話 ヴェーヌス賛歌その十四
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第十九話 ヴェーヌス賛歌その十四

「そのことに気付けることは」
「難しいですね」
「不可能に近い」
 そこまでだというのである。
「だからこそだ」
「周囲はあの方を」
「理解できないのだ」
 そのせいだというのだ。王のその本質がわからないからだ。
 しかしワーグナーはだ。その中でだというのだ。
「私はあの方の意中の作品を完成させていっている」
「陛下のその意中の」
「そうだ。それでだ」
 それによってだというのだ。
「私はそれがわかるがだ」
「他の方は」
「できない。陛下ご自身もだ」
「陛下もですか」
「自分のことはだ。ある意味において最もわからないものなのだ」
 今度はこう話すワーグナーだった。
「どうしてもだ」
「では陛下は」
「御自身を男性だと思っているのだ。これは何度も言おう」
「それが問題の本質だからですね」
「そうなのだ。男性ではないのだ」
 あくまでそうだとだ。王について話すワーグナーだった。
「そのことに陛下はおそらくだ」
「おそらく?」
「永遠に気付かれないだろう」
「陛下御自身はなのですか」
「そうなのだ。そして周囲もだ」
「陛下の本質には」
「そしてそれがどうなっていくのか」
 それも話していくのだった。王のこれからのこともだ。
「心配になる」
「この御結婚は」
「相手が男性であれば」
 ワーグナーは決して有り得ないことを話した。
「そしてその彼がだ」
「ローエングリンであれば」
「あの方は幸せになれたのだ」
 そうなればだとだ。彼は有り得ないことを話していく。
「あの方は。実はエルザなのだから」
「エルザだからこそ」
「そうだ。だから相手がローエングリンであれば」
「幸せになれたのだ」
「しかしです」
 コジマはエルザ、そしてローエングリンと聞いてだ。そうしてだった。 
 彼女はその気付いたことをだ。ワーグナーに話した。
「マイスター、エルザですね」
「あの方はな」
「しかしそれではです」
 エルザというヒロインについてはだ。どうかと。コジマは話す。
「やはり幸せになれないのではないでしょうか」
「エルザ=フォン=ブラバントだからというのか」
「エルザは結ばれませんでした」
 こう話すのだった。
「その愛は成就されませんでした」
「そうだったな。ローエングリンの名を聞いてしまい」
「そうして幸せになれませんでした」
「愛を手に入れられなかった」
「愛する存在の名前を聞いてしまい」
 それでなのだった。どうしてもだ。
 エルザは幸せになれなかったのだ。それができずにだ。
 それを話してだった。コジマはだ。
「聞かずにはいられなかったのですから」
「愛する者の名前はだ」
「はい、それは」
「聞かず
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