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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第10話 意外なもの
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過ぎるのを待っているのだろう。

 エースのために早く寝なくては、と意識して寝ようとするが、眠くなるような気配はなかった。それどころか頭が冴えてしまっている。

 眠気の全く起こらない自分の状態がどうにもならず、フローラは上体を起こした。

「ごめん、フォンバレンくん。眠れない」

「どうしたのさ」

「なんか目が冴えてるような感じがして……ごめんなさい」

 フローラが安眠出来なければ、エースが落ち着いて寝ることは出来ない。そのため、何がなんでも寝なくてはならない。しかし眠れない。自分のせいで余計に迷惑をかけてしまっている事実を痛感し、フローラは暗い声で謝った。

「少しだけ待ってて」

 その謝罪を聞いたエースはフローラにそれだけ言うと、キッチンへと向かった。

 何をするのだろう、とフローラが視線を向けた先では、夕方の時と同じようにティーカップとソーサーを用意していた。そして同じようにティーポットから紅茶らしきものをカップへ注ぎ、それをこちらへ持ってくる。

「はい、どうぞ。熱いから、気を付けて」

「これは……?」

「眠りやすいようにあっためたハーブティー。一般的な紅茶と違って、目覚ましにはならないから安心して」

 エースの解説を聞きながら、フローラはティーカップの縁に口をつけ、恐る恐る傾ける。中の液体が喉を通ると、夏なのにも関わらずその温かさが身体の芯まで染み渡った。

「美味しい……」

「口にあったなら何より」

 ソファーに座った状態のエースの傍で、布団の上に座ったフローラはハーブティーを飲んでいた。先ほどまで緊張へと変換されていた『見守られている』ということが、今は安心感に変換されていた。

「もし迷惑なんじゃないか、とか考えてるなら、気にしなくていいよ。俺は大丈夫だから」

「……本当に?」

「うん。本当に大丈夫」

 エースのその言葉を聞いて、思わず口元が緩んだフローラはフフフと声に出して笑ってしまった。目の前で首を傾げるエースに対して、反対の手に持ったソーサーの上にティーカップを置いてから、フローラは浮かんだ言葉を口にした。

「フォンバレンくん、最初に出会った時からずっと変わらないね」

「そうか? 背は伸びたし、声も低くなったし……」

「ううん、そういうことじゃなくて……」

 その先の言葉は喉元まで出てきていたが、言わない方がいいかなとフローラ自身が思ったことでそのまま霧散していく。目の前のエースは不自然に止まった言葉の続きが気になる様子であったが、それは数秒間だけの話であった。

「あ、ハーブティーごちそうさまでした」

「どうも。片づけは俺がやっとくから、また横になったら?」

「そうさせてもらうね」

 
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