68話:誕生日
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と言った所だろうか?父と同世代のはずだがかなりお若く見える。
お茶の時間は、予想外に楽しい物となった。御二人とも博学だが、教師にありがちな知識をひけらかす感じはなく、予備知識が無い私にもわかるように配慮しながら面白おかしく話してくれた。伯と視線が合うとドキっとするし、最近は振る舞う相手がいないのだと言って、2杯目のお茶は、伯が自ら入れてくれた。お世辞ではなく、確かに美味しいお茶だった。次にお会いするときには、せめて美味しい理由位は分かるようになっておきたいと心から思ったくらいだ。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。お茶会の終わりに陛下が本題を切り出される。
「うむ。やはりそちとの時間は楽しいものじゃな。ところでな、実はアンネローゼの弟が相談もせずに幼年学校への入学を決めてしまってな。万が一の事があってはと不安に思っておるのだ。そこでそちにその者の後見人を頼みたいのだが、引き受けてくれぬか?」
「他ならぬ兄貴の頼みだし、10歳で家庭を切り盛りしだした頑張り屋さんの頼みだ。もちろん引き受けさせてもらうけど2つばかり条件を出したいね。ひとつ目は、軍人を志している以上、教育方針は私に一任してもらいたい。後見人になる以上は、いずれ帝国を背負って立つ人財に育て上げるつもりだ。2つ目はそれに関連して、今は『陛下の寵姫の弟』とみられるだろうけど、将来的にはグリューネワルト伯爵夫人が『帝国軍の重鎮の姉』となるだろう。失礼ながらご実家の経済状況では、教育を受ける機会に乏しかったはずだ。今からで構わないのでそちらの方も努めてもらいたい。もちろん教師役も私が手配するし、伯爵夫人を不快にさせるような人材を選ばないことも予め約束するが、いかがかな?」
「はい。弟の後見人になって頂くだけでも幸いなことです。私で及ぶことなのかはわかりませんが、弟同様、精一杯励むことはお約束します」
「では、後見人の話、謹んでお受けいたします。それと、後見人の件は私から頼んだことにしましょう。『寵姫が陛下に強請って、軍部貴族を弟の後見人にした』と言うのも、後ろ暗い事がある方々には、邪推の材料になるでしょうから......」
伯は後見人になるにあたっても、最大限配慮をしてくれた。それから数日して、後宮の私の館に礼儀作法の講師としてシュタイエルマルク伯爵夫人、芸術の講師としてヴェストパーレ男爵家のマグダレーナ嬢が来て下さるようになり、学んだことの実践相手として、ルントシュテット伯爵夫人や、リューデリッツ伯爵夫人、マリーンドルフ伯爵家のヒルデガルド嬢が頻繁に訪れてくれるようになった。皆、『あの方』に選ばれた方々なのだろう。良いひとばかりで安心している。
厨房から戻ってくる二人の気配が、私の時間を今に戻してくれた。弟は食器のセットと、シルバーカトラリーを入れる大き目なケー
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