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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 10
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ものは、積もりに積もった相手への憎悪の爆発か、自分自身を護る為の無関心か、自分自身への失望による空虚か。いずれにしても、一度嫌悪まで行き着いてしまったら以後、自身と相手の感情を擦り合わせるのは至極困難であると言えるでしょう」
 「…………で?」

 「困難な状況に陥ってもなお、相手の気持ちと真っ直ぐに向かい合いたいという情意。それを的確に表す呼び名。私は一つしか存じ上げておりませんのよ、ロザリア様」

 しっかり向き合えると良うございますね。
 本当は、疾うにお気付きでしょうけれど。

 花も綻ぶ温かな微笑みを浮かべた聖職者は、首を傾げる私を一人残して、扉の向こう側へと滑り込んだ。
 空間を隔てる硬質な音も、この耳が確かに受容した。
 だから……(うつむ)いて頬を膨らませた私の呟きなんぞ、聴こえちゃいないだろう。


 「………………余計なお世話だっ」








vol.14 【i・ji・wa・ru】

 「では、失礼致します」
 隣室の物音を完全に遮る木製の分厚い扉が閉じられ
 「「「「「…………。」」」」」
 男女合わせて六名が集う執務兼応接室内に、何とも言い難い微妙な静寂が広がる。
 プリシラが出て来る直前までの和気藹々(わきあいあい)とした空気は今や、痛々しい人を適度な距離で見守るかのような、幼子と蝶がお花畑で戯れる微笑ましい光景を目の当たりにしたような、生温かいものに取って代わってしまった。
 「さて、と」
 取手から手を離した元上司様はその場でくるりと転身し、にやぁああり……と、悪魔も裸足で逃げ出しかねない途轍もなく邪悪な笑みを私に向ける。
 「ご気分は如何(いかが)かしらぁ? ねぇ? 皆が聴いている中で、我らが主神に体当たり宣言をされた、元神父のクロスツェルさぁーん?」
 悪意だ。
 プリシラの楽し気な言葉にも行動にも表情にも、根深い悪意しか感じられない。
 「あー……、なんというかまぁ………………おめでとう?」
 「ロザリアさんは強い女性ですね。誰かと向かい合って正面から総てを受け止めたい……なんて、常人にはなかなか言えませんよ。しかも、他人が居る席でそれを認めてしまえるとは」
 「いや、ロザリア様は此処に我らが居る事など知らぬのではないか? ほれ、全開にせん限りは扉自体が遮蔽物になって、あっちからもこっちからも室内はよく見えんのだし」
 「あら。嫌ですわ、リーシェさん。私は扉を開く前にきちんとお伝えしましたわよ? 「何か御用がございましたら、隣の部屋にお声掛けください。「誰か一人は」「必ず」控えておりますので」と」
 「あの、プリシラ様? それって、まさに今現在、此処に複数人が集まっているとは思わないやつですよね」
 「肝心な「前提」が抜けているわよ、ミー
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