純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 10
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会に居付いたのは一応、私の意思だからな? ソコは責めなくて良いからな? そんな、標的に狙いを定めた肉食獣みたいな鋭い目は、あんたの場合いろんな意味で怖すぎるから止めとけ? な?」
「変態病の罹患者は、症状が重ければ重いほど何彼に付け己の言動を正当化したがるもの。少しでも甘い顔を見せようものなら、見せた分だけ殊更病状を悪化させてしまいます。被害者がお庇いになられる必要など、小匙一杯分もございませんわ、ロザリア様。周囲への思わぬ感染拡大を防ぐ意味も込めて、いっそ今の内に、一思いにこう、キュッ……と」
「せんで良い! 元仲間の話で薄っすら笑いながら首を絞める動作すんなよ、物騒な! あんた、本当にどうして聖職者になれたんだ!!?」
「愛は全てを救うと信じております故」
「びっくりするほど説得力が無ぇ!」
「純然たる事実ですわ」
さすが、クロスツェルの元上司。
にっこり って文字を貼り付けた華々しい笑顔がアイツそっくりで、実に胡散臭い。
「えー……と、とにかく! あんにゃろうは人の話を聴かないし、思い込みが激しい上に強引だし、愛してるとかなんとか言っといて私の気持ちはいっつも二の次だし、心配ばっかりさせやがるしっ」
「やはり、キュッと」
「しないし、させねぇよ!? 良いから、その凶器を下ろして最後まで黙って聴いててくださいお願いします!!」
「御心のままに、我が主神」
一礼して半歩下がった後、真面目な顔で跪くプリシラ。
……こいつ、私をおちょくって遊んでんじゃないのか?
大人しくしてくれるのはありがたいけど、釈然としねぇ。
「はあぁー……。つまり何を言いたいかって、私はクロスツェルとベゼドラが大っ嫌いだってコトだ。ベゼドラに取り憑かれたアイツの言動、私にした総ては、こっから先どう言い繕われても、どんな風に償われても、一生赦したりしない。あんたもさっき言ってただろ? 多くの人間は、自身が傷付けられれば周囲を恨むって。私も同じだよ。アイツが死んだ後も、私は、私の意思も事情も一切合切無視して私を縛り付けた二人を、延々と恨んで憎んで嫌い続ける。……でもさ、クロスツェルには感謝してるんだ。アイツの心情がどうであれ、私を見付けて救い上げてくれた事実には変わり無いから」
クロスツェルの教会で世話になる前、割れたガラス瓶で脅したあの日、あの時。
私の手を離してさえいればきっと、アイツはその後も傷付かずに済んだ。
善きように導く、なんて、職業柄口を衝いて出ただけじゃないのかって感じの約束を律儀に守ったりしなければ、アイツは三十代や四十代、それ以上の立派なおっさんになっても、偽りの女神を妄信する神父のまま暢気にへらへらと笑いながら生きていけただろう。
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